普通の人でも巻き込まれる覚せい剤、麻薬の密輸

普通の人でも巻き込まれる覚せい剤、麻薬の密輸

2012/05/20

今、犯罪とは縁のない普通の人を利用した覚せい剤や麻薬の密輸事件が多発しています。
覚せい剤の密輸組織は、「良いアルバイトがあるよ」「簡単にお金が手に入るよ」「海外旅行に行けてさらにお金ももらえるよ」といった魅力的な言葉で、言葉巧みに普通の若者を誘い出します。ヨーロッパやシンガポール、ときにはアフリカといった場所から覚せい剤が隠されたカバンや缶を輸入させるのです。カップルを利用することもあります。
もちろん、誘うときには覚せい剤を密輸してほしいなどとは言いません。例えば「日本で高く売れるサフラン」「チョコレート」などという嘘をついています。
何も知らない若者は、「ちょっぴり危ないかもしれないけど、まあ大丈夫かな!旅行代金を払ってくれるといっているし、彼女も誘ってみよう!」といった軽い感覚で海外に行き、旅行ついでに荷物を渡されて日本に帰ってきます。そして、日本の税関検査を通るときに、見つかって逮捕されるのです。

 

覚せい剤の密輸事件は起訴された場合、裁判員裁判となります。
裁判員裁判で無罪を争う場合、主に「故意が認められるのか、認められるとまではいえないのか」という点がポイントになってきます。特に「未必の故意」と呼ばれる点が問題となってきます。
わかりやすくいえば、「日本に持ち運ぼうとしたものが覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法なクスリかもしれない」という考えが被告人にあったかどうかが有罪か無罪かの分かれ目とされています。
この「かもしれない」という点を巡って激しい争いが繰り広げられていくのですが、ちょっとでも頭によぎったら「かもしれない」と思っていたと認定していいわけではなく、「かもしれない」という点が認められるためには、相当程度の可能性を認識していることが必要とされています。
刑事弁護人は、被告人が「あくまで巻き込まれたにすぎず、故意があったとは認められない」ということを裁判員に説得的に伝えていかなければなりません。
そのために、故意に関係するあらゆる要素、例えばクスリが巧妙に隠されていたかどうか、被告人が隠されたものを確かめたことがあったか、依頼者とはどういった関係だったか、依頼の内容はどのようなものだったか、依頼の報酬はあったのか、税関検査をうけるときにどんな対応をしていたか、違法な薬物の経験があったか、不自然な海外旅行をこれまでしたことがあったかといった点など、を検討して刑事弁護活動を行っていきます。

 

マレーシアでは、覚せい剤の密輸事件は原則として「死刑」とされています。2011年には日本の看護師の女性が故意を否認しているにもかかわらず、死刑判決を受けました。他にも、中国やイラン、サウジアラビア、シンガポール、ベトナムといった国々でも覚せい剤の密輸事件には死刑となることが多いようです。日本でも覚せい剤の密輸事件は他の事件と比べてとても重いです。
絶対に冤罪を作ってはいけないことはもちろんですが、覚せい剤の密輸の場合は、その刑罰の重さからみても、冤罪が起こったときに取り返しがつかなくなる可能性が高いでうす。その意味で刑事弁護人の責任はとても重いのです。
現在、鴻和法律事務所では、刑事弁護に関する勉強や研究を行い続けています。「重い責任を負う」ことが仕事の私たちですが、責任と胸をはって向いあっていくためにも、日々研究を続けていきたいと思います。

 

平成24年5月20日
文責 弁護士 矢口耕太郎

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