交通事故

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取扱分野

  • ・交通事故に伴う損害賠償請求(保険会社との対応)
  • ・交通事故を起こした場合の被害者との交渉
  • ・交通事故に伴う刑事事件の対応
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被害者の立場でまず問題になるのは,どのような損害について、いくらの賠償を支払ってもらえるのかということです。加害者側が自動車保険をかけていれば、保険会社から示談金額が提示されたりしますが、それが妥当な金額などうかも、一般の方には判断することが難しいはずです。

弁護士にご相談いただければ、賠償してもらうべき損害の範囲や提示額の妥当性について具体的にアドバイスすることができますし、ご依頼を受けた上で依頼者に代わって示談や損害賠償請求(加害者・保険会社への対応を含む)の対応をし,依頼者が法的に適切な額の賠償金を得られるように代理人として活動します。

特に、怪我が大きかった場合や後遺症が残っている場合、保険会社側から治療の打ち切りを示唆されている場合などは、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。

次に、車同士での事故の場合では、「過失相殺」が問題になることも多いです。
事故状況によって過失の割合が変わってくるのですが、特に損害額が大きいときには、過失割合が10%変わってくるだけでも、大きな金額の差になってきます。

加害者の立場では民事手続のみならず,刑事手続,行政手続も問題となり,被害者への対応を含む民事訴訟の対応や適切な刑事・行政手続が採られるように対応します。

また,交通事故の解決方法には、①示談(話し合い)による解決,②紛争処理センター(財団法人交通事故紛争処理センター)による解決,③裁判による解決の3つがありますが,これらの解決方法には、それぞれに長所・短所があり,どの手続を選択するかの判断は、事故態様や被害の内容によって異なります。
弁護士に相談・依頼することで,適切な手続の選択ができ,依頼者は交渉の煩わしさから解放され,かつ,適正な賠償額を獲得することができるといえます。

なお、最近の自動車保険には、「弁護士費用特約」という特約が含まれていることが多いのですが、この特約を利用すると、交通事故による損害賠償などでは、被害者・加害者を問わず、弁護士への相談費用や報酬が保険から支払われますので、金銭的な負担を全くせずに弁護士に依頼することができる場合もあります。
当事務所でも弁護士費用特約を利用して相談・受任をすることは可能ですので、まずはご自分が掛けられている保険会社にご確認ください。

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交通事故のQ&A

加害者の責任について
Q1 私は,先日,歩行中に自動車に轢かれる被害に遭いました。加害者はどのような責任を負うのでしょうか?
まず,交通事故の加害者が負う責任には大別して
①刑事上の責任
②行政上の責任
③民事上の責任の3種類があります。
①刑事上の責任とは,警察及び検察の捜査機関によって捜査が進められ,検察から起訴された上で,裁判等により自動車運転過失致死傷等の罪名で処罰(懲役,禁錮,罰金等)を受けるものです。
次に,②行政上の責任は,交通事故により交通違反の基礎点数や付加点数が付けられ,その積算点数が一定の点数を超えた結果として,自動車運転免許の取消,停止の処分を受けるものです。
最後に③民事上の責任は,被害者等から損害賠償として金銭の支払の請求を受けるものです。このうち,被害者側として弁護士は,主に③の民事上の責任について追及する際に関与することになります。
また,①の刑事上の責任についても,被害者参加弁護士として,刑事裁判に関与することがあります。
Q2 引き続きの質問です。その後,加害者が加入している損害保険会社から連絡があり,保険金の支払額の提示がありました。この申出に応じて保険金の支払を受けることにした場合,どのような効果が生じるのでしょうか?
損害保険会社からの保険金支払額の提示は,あなたに対する示談の提案です。そのため,保険会社から支払を受けることにするということは,加害者との示談契約に合意したこととなり,後日この示談契約の内容と異なる請求は原則としてできなくなります。ですから,慎重に金額,内容を検討した上で,保険会社と話し合い,結論を出す必要があります。
Q3 加害者が加入している保険会社から提示のあった金額に納得できません。どのように対応すればよいでしょうか?
まずは,弁護士が介入した上で保険会社との話合いを続行することが考えられます。弁護士が介入すると,裁判基準(典型的な損害などについては,民事交通事故訴訟損害賠償算定基準など,過去の裁判結果をもとにした文献があります。)に沿って損害額を算定し直し,この額を基に保険会社と交渉します。これにより,保険会社の提示額が大きく変わることがあります。また,ご本人が交渉してもうまくいかないような場合であっても,弁護士が介入すると話合いが進むことがあります。 話合いを続行してもこれ以上進展がないという段階であれば,調停や訴訟などの方法が考えられます。
Q4 上記Q3の質問に対する回答であげられている2種類の方法のそれぞれの内容と特徴について教えてください。
(1)まず「調停」は裁判官と調停委員という専門家が,あなたと,相手方の間に立ち,両者から言い分を聞き,両者から提出される証拠を見て,和解を勧めるなどの方法で話し合いによる解決を進める制度です。両者間で合意が成立すると,その内容が調停調書という書面に記載され,その書面は裁判における判決と同様の効力を有することになります。調停手続によれば,当事者間では話合いがうまくいかないような場合でも,公的でかつ中立的な立場にある裁判所に間に入ってもらうことにより,話し合いを円滑に進めることができます。あまり事実関係に争いがない場合や,損害額が少なく裁判をすれば双方とも費用対効果が合わない場合などに有効な方法です。
(2)次に「訴訟」とは,いわゆる裁判のことで,一定の金額の支払を命じる裁判所の判決を求める手続のことです。紛争が,当事者同士の話合いや調停手続を経ても解決できなかった場合,事実関係などで双方に争いがある場合,あるいは初めから相手方が全く話合いに応じないような場合に有効な手段です。ただし,訴訟手続の中でも訴訟上の和解という形で,当事者間の合意に基づいて紛争を解決することも可能です。
Q5 加害者が自動車保険に加入しておらず,また加害者に連絡をとってみても,金がないと言うばかりで簡単には支払ってくれそうにありません。加害者以外に請求することはできないのでしょうか?
加害者が支払をしてくれないような場合でも,自賠責保険の保険会社に対して,保険金額の範囲で損害賠償額の支払を請求することが認められています(自動車損害賠償保障法16条)。また,内払請求といって,治療費等の支払が継続している場合には,その支払分を内払として保険金の支払を請求することもできます。さらには,仮渡金といって,被害者が死亡された場合や一定の障害を負ってしまった場合には,死亡あるいは負傷の事実を証明すれば,一定の金額(死亡された場合には290万円(自動車損害賠償保障法施行令5条))を受け取ることができます(自賠法17条)。
また,ご自身やご家族が損害保険に加入されている場合,搭乗者保険や人身傷害保険等の特約があれば,ご自身の保険から相当な額の保険金の支払を受けることができる場合もあります。
Q6 自賠責保険というのは,任意保険とどのように違うのでしょうか?
自賠責保険というのは,正式名称は自動車損害賠償責任保険といい,強制加入の保険です。日本の道路を走行している自動車はごく一部の例外(自衛隊の車両等)を除いて,自賠責保険に加入していないと道路を走行することが許されておらず,加入していないことに対する罰則も規定されています。これに対して,任意保険というのはテレビCMでもよく見かけるようないわゆる「自動車保険」のことであり,自賠責で足りない部分を契約者が自由に契約する性質のものです。事故により人が死傷した場合に損害を填補する対人賠償,事故により他人の物に損害を生じさせた場合の損害を填補する対物賠償等,内容にも様々なものがあります。
また,自賠責保険によって支払われる金額には限度額があり,一般的には裁判基準で支払われる損害賠償額を下回ることから,裁判基準と自賠責保険によって支払われる金額の差を任意保険によって埋めることになります。そのため,万が一,交通事故の被害者になってしまった場合には,加害者が任意保険に加入しているか,加入していたとしてもその保険の内容はどのようなものかという点が,損害賠償としていくら支払を求めることができるのかという観点から非常に重要になります。
Q7 交通事故の加害者が現場から逃亡してしまい,加害者が誰か分かりません。このような場合には,支払を受けることはできないのでしょうか?
被害者に対する損害の填補を行う政府保障事業(自賠法71条以下)により,支払を受けることができます。填補される範囲や支払限度額は,自賠責保険の基準とほぼ同様です。ご質問の事例の場合以外にも,加害者が有効な自賠責保険に加入していなかったり,加害者が盗難車で自賠責保険の効力が及ばないような場合にも同様に政府保障事業により,支払を受けることができます。
Q8 自分の車を友人に運転させたら,その友人が交通事故を起こしてしまいました。同乗していない私も損害賠償責任を負うのでしょうか?
自賠法によると、「運行供用者」は運行によって生じた損害の賠償責任を負うと規定されています(自賠法3条本文)。この「運行供用者」とは、通常は車の所有者のことをいいますが、所有者が自ら運転している場合に限らず、他人に車を貸した場合も運行供用者とされる場合があります。判例は,運行の支配,運行による利益という2つ基準で個別・具体的に判断しています。本件のように他人に自動車を一時的に貸与した場合でも、運行が借受人のため専ら排他的に行われるという特段の事情がない限り運行供用者として責任を負うものとされています。すなわち、判例は、「運行供用者」の解釈・適用に当たり、運行支配の要件を重視し、かつ、広く自動車の運行による危険を防止できる立場にある者は責任を負うべきものとして、被害者救済を図っているものと思われます。あなたとしては,自分の意思で友人に運転させた以上,原則として「運行供用者」として責任を負うことになります(自賠法3条)。
Q9 交通事故を起こしてしまったのですが,警察に届け出る義務はありますか?
「交通事故があったときは,当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は,直ちにこの車両等の運転を停止して,負傷者を救護し,道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において,当該車両等の運転者は,警察官が現場にいるときは当該警察官に,警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所,当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度,当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない」(道路交通法72条1項),とされています。従って、交通事故を起こした場合には、警察に届け出る義務があります。この義務を怠った場合には3月以下の懲役又は5万円以下の罰金という罰則があります(同法119条1項10号)。
Q10 交通事故証明書とは何ですか?
交通事故証明書とは,特別民間法人である自動車安全運転センターが発行する事故の事実を確認したことを証明する文書であり交通事故の日時,当事者,発生場所などが記載されており,交通事故に伴う保険金請求の際に必要になります。申請できるのは,交通事故の当事者及び交付を受けることについて正当な利益を有する方(例えば、損害賠償の請求権のある親族、保険の受取人等)です。申請先は自動車安全運転センターです。但し,警察への事故の届出がない場合には発行できません。
加害者に対する請求について
Q1 加害者が死亡してしまった場合、誰に対して損害賠償を請求できるのでしょうか?
加害者の相続人に対して請求することができます。ただし、相続人が相続放棄をしている場合には、相続人への請求はできないということになります。
Q2 私の内縁の者が交通事故で死亡したのですが,私は加害者に対し何らかの請求をすることができるのでしょうか?
内縁関係の者は相続権が法律上認められていませんが,夫婦としての実態を備えている生活共同体の場合には,逸失利益,慰謝料ともに加害者に対して請求することができます。
Q3 生命保険金をもらうと加害者に対する損害賠償の額は減るのですか?
死亡した被害者の生命保険金を相続人が受け取る場合,その分を相続人が加害者に対する損害賠償額から控除しないと,損害賠償額と保険金の二重取りになるのではないかとも思われます。しかし,損害賠償額から生命保険金を差し引くべきではないという考え方は判例や学説で一般的に認められています(最判S39.9.25)。その理由は,「生命保険契約によって支払われる生命保険金は,被害者が払い込んだ保険料の対価として支払われるもので,どんな死亡の場合にも当然支払われ,交通事故を原因として発生する損害賠償とは本来無関係なものである。それゆえに,損害賠償額の算定に,考慮する必要がない」というものです。
Q4 加害者の車両は盗難車だったのですが,所有者に損害賠償を請求することはできますか?
車の保有者は,車の保管について過失がない場合にのみ責任を免れ,その場合は運転者だけが運行供用者として責任を負います。いわゆる泥棒運転の具体的な態様は様々ですが、典型例として車の管理が十分になされているにもかかわらず第三者がドアをこじ開け、エンジン直結の方法等で車を盗んだ場合には、保有者に賠償責任を負わされることはないと考えられています(大阪地判S47.9.12)。また,「自動車の所有者が駐車場に自動車を駐車させる場合、右駐車場が、客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造、管理状況にあると認めうるときには、たとえ当該自動車にエンジンキーを差し込んだままの状態で駐車させても、このことのために、通常、右自動車が第三者によって窃取され、かつ、この第三者によって交通事故が惹起されるものとはいえないから、自動車にエンジンキーを差し込んだまま駐車させたことと当該自動車を窃取した第三者が惹起した交通事故による損害との間には、相当因果関係があると認めることはできない。」とされています(最判S48.12.20)。
Q5 病院までタクシーで通った場合,加害者にタクシー代を請求できますか?
通院のためにタクシーを利用せざるを得ない場合には,損害として認められますが,タクシーが必要かどうかについてはよく争いになります。近親者の運転する自動車を使用した場合は,原則として実費(ガソリン代)が認められます。通院のために付添人が必要とされる場合(付添人の要否や程度もよく争いになりますが)は,その人の交通費も損害と認められます。
損害について
Q1 症状固定とはどのような状態を指すのですか?
症状固定とは、傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療法(療養)をもってしても、その効果が期待し得ない状態(療養の終了)で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最後の状態(症状の固定)に達したときをいいます(労災補償障害認定必携〔改訂第14版〕)。簡潔に説明するならば,交通事故によって傷害を負った人について、治療を続けても現在より症状の改善が期待できない状態になったことをいいます。
Q2 症状固定後も休業損害や治療費を請求することはできますか?
今まで治療費,休業損害,入通院慰謝料、通院交通費、諸雑費等の名目で請求していたものが、一旦症状固定とすると、原則としてこれらの名目で損害賠償を請求することはできなくなります。症状固定日後は、治療費等については,後遺症逸失利益と後遺障害慰謝料という形で取扱うことになります。
休業損害について
Q1 私は専業主婦なのですが、交通事故の被害に会い、入院をしたため家事ができませんでした。そのことの損害は請求できないのでしょうか?
家事労働をできなかったことについて損害を被ったとして、一定の賠償額を請求できます。賠償額については、賃金センサスの女子労働者の平均賃金を基礎として算定する等の方法が考えられます。なお,パートタイマー等で働いている方については,現実の収入額と女子労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算定した賠償額を請求することが考えられます。
Q2 私は、個人でラーメン屋を営んでいます。先日、交通事故に遭い、入通院したため、その間に働けず、店を閉めざるを得ませんでした。私が働けなかったことによる損害を加害者に請求できないのでしょうか?
被害者が、交通事故により休業を余儀なくされた場合、事故の加害者に対して休業期間に収入を得られなかったことによる損害(休業損害=1日の基礎収入×休業日数)を請求できます。そして、今回のように被害者が個人事業主の場合、原則として前年度の所得税の確定申告書をもとに基礎収入を決めることになります。ただし、この所得税の確定申告をしていなかった場合でも、それまでの経営の実態から相当の収入があったことを証明できれば、賃金センサスの平均賃金又はそれを減額した金額を基準に休業損害が認められる場合があります。
車の買い替え費用について
Q1 私は買ったばかりの新車に乗っていたところ、停車中に追突されてしまいました。保険会社からは,車の修理費用を支払うと提案されましたが,私としては,車の買い換えまたは買い換え費用を請求したいです。このような請求は認められますか?
不法行為による損害賠償は金銭賠償が原則ですから、車の買い換えを求めることはできません。また、修理費用が支払われれば、基本的には損害が填補されることとなり、買い換えに必要な費用(新車代)を請求することもできません。もっとも、買ったばかりの新車の場合、事故歴・修理歴が付いたことにより下落した価値(いわゆる評価損)について,損害賠償請求が認められることがあります。
Q2 前問の回答で触れられている評価損がどのような場合に認められるのか、詳しく教えて下さい。
評価損(事故歴があるという理由で当該車両の交換価値が下落する場合の損害)がどのような場合に認められるかについて確立した基準があるわけではありませんが、これまでの裁判例等を踏まえると、初度登録からの期間、走行距離、損傷の部位(車両の機能や外観に顕在的又は潜在的な損傷が認められるか)、車種(人気、購入時の価格、中古車市場での通常価格)等を念頭に、評価損が発生しているか否かが検討されることになります。これまでの裁判例からすると、外国車又は国産人気車種で初度登録から5年(走行距離で6万キロメートル程度)以上、国産車では3年以上(走行距離で4万キロメートル程度)を経過すると、評価損が認められにくい傾向があり、これに上記の事情を加味して評価損が発生しているかを検討すべきことになります。
過失割合について
Q1 交通事故を起こしましたが、相手方と私のどちらがどれくらい悪かったかについてどう判断したらよいのかわかりません。それを決めるための基準のようなものはありませんか?
交通事故の当事者のどちらにどれくらいの落ち度があったかは、いわゆる過失割合の問題といいますが、終局的には裁判で定められます。なお、裁判実務においては、判例タイムズ社が出している「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁民事第27部編)を基本に,事案に応じて修正要素を考慮して決められるため、同基準が参考になります。
過失相殺について
Q1 私の10歳になる子どもが急に路地から道路に飛び出して自動車にはねられてしまいました。加害者側は,子どもが道路に飛び出してきたことに過失が認められるとして,過失相殺を主張していますが,この主張は認められるのでしょうか?
被害者に過失があったときは,裁判所は,これを考慮して,損害賠償の額を定めることができるとされています(民法722条2項)。最高裁は,被害者の過失を斟酌するには「事理弁識能力」(責任能力よりも低い能力)があればよいとしています(最判S39.6.24)。本件の事例では,子どもは10歳ということで事理弁識能力が備わっている可能性が高いので,子どもに過失が認められるのであれば、過失相殺の主張は認められるものといえます。
損益相殺について
Q1 損益相殺とは何ですか?
被害者またはその相続人が事故に起因して何らかの利益を得た場合,当該利益が損失の填補であることが明らかであるときは,損害賠償額から控除することをいいます。控除の例としては,受領済みの自賠責損害賠償額や政府の自動車損害賠償保障事業填補金,健康保険法による傷病手当金,国民年金法による遺族基礎年金などがあります。これに対して,生命保険金(最判S39.9.25)や社会儀礼上相当額の香典・見舞金(大阪地判H5.3.17)は控除されなかった裁判例があります。
請求に関する期間制限について
Q1 今から3年前に、相手方の信号無視で交通事故を起こして、大けがを負いました。事故からどれくらいの期間経っても、請求が可能でしょうか?
請求に関する期間制限には、
①時効
②除斥期間があります。
まず、①時効については、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間、損害賠償の請求権を行使しなければ請求できなくなります(民法724条前段)。したがって、事故から3年以内であれば時効の問題は生じませんが、3年間経過している場合にも、相手方から支払いがなされている場合や相手方がどこのだれであるか判明したのが事故後時間が経過したのちの場合等には、時効により請求を妨げられないこともあります。
また、②除斥期間といって、事故の時から20年を経過すると請求できなくなります(同条後段)。なお,自賠責保険に対する損害賠償金の請求については,時効期間が3年と短いため,注意が必要です(なお、平成22年3月31日以前に発生した交通事故については、自賠責保険に対する損害賠償金請求の消滅時効は2年となっています)。
弁護士費用の請求について
Q1 交通事故の加害者に対して訴訟を起こしたいのですが、仮に裁判をする場合、できることなら弁護士費用を負担したくありません。弁護士費用を加害者に請求することができるのでしょうか?
加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起して請求認容判決がでた場合、弁護士費用相当額を損害の中身として認められる場合があります。もっとも、損害額として認められる弁護士費用は、現実に弁護士に支払った費用とイコールとはなるわけではありません(損害賠償請求額の10%を目安に請求する例が多いです)。例えば、1億円の損害賠償請求訴訟を提起し、訴訟追行の結果、弁護士費用以外の損害として1000万円の損害賠償請求が認められる場合に、現実には500万円の弁護士費用がかかっていたとしても、弁護士費用分として500万円を支払わせる内容の判決が出ることはほとんど考えられません。
Q2 私の過失割合が0でも,裁判をした場合に弁護士費用全額が加害者負担として認められないことがあるというのは納得できません。弁護士費用を負担しないですむ方法はありませんか?
ご自身で加入している任意保険でいわゆる「弁護士特約」(保険会社によって,「弁護士費用特約」「弁護士費用等補償特約」など名称が異なります)を付けていれば,ご自身が加入している任意保険会社から,契約に応じた限度額の範囲内で弁護士費用を支払ってもらうことができます(相談料10万円,着手金・報酬金合計300万円を上限としているのが一般的です)。この「弁護士特約」は,示談交渉のみの場合,裁判をした場合のどちらでも利用できます。
追突されたなど過失割合が0対100の場合であれば,「弁護士特約」を利用しても保険等級は下がらないのが一般的です(保険契約の内容によっては保険等級が下がったり翌年の保険料が上がったりすることもありますので,ご自身の契約内容をご確認下さい)。また,ご自身の自動車運転中の交通事故だけでなく,自転車運転中や歩行中の交通事故,さらにはご家族の交通事故についても「弁護士特約」が利用できることもあります。ご自身が加入している任意保険に「弁護士特約」を付けているかどうか,一度確認されてみて下さい。
健康保険の適用について
Q1 交通事故で傷害を負ったのですが,健康保険は使えますか?
被害者からはじめから健康保険を使いたいといえばはじめから使えます。健康保険を使うと保険診療となるために診療代が決まっていますが,健康保険を使わないと病院が自由診療扱いにするため,診療代そのものが高くなってしまいます。その結果,たとえば相手方が無保険の場合は,できる限り診療報酬総額を減らしておかないと,損害全額を賠償してもらえないリスクが高まります。

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