商標権侵害事案の弁護

商標権侵害事案の弁護

2021/07/09

事業を営んでいる個人や法人の場合、事業戦略のひとつとして、自分の商品やサービスに魅力的な名称(標章)を付することを検討している方は少なくありません。

今回は、商標権侵害事案における弁護士の役割について、概略をご説明いたします。

1.相手方が自己の商標権を侵害しているのではないかと考えている相談者の場合

まずは、弁護士において、商標権の存否について調査・検討します。具体的には、当該商標が現在も有効に登録されているか否かなどを調査します。通常は、商標権の登録原簿や商標公報を確認します。

次に、相手方が相談者の商標権を侵害しているか否かについて調査・検討します。商標権者は、指定商品又は指定役務について、登録商標の使用をする権利を専有するとされているため(商標法第25条)、登録商標と同一又は類似の標章を、指定役務と同一又は類似の商品又は役務について使用することは商標権の侵害に該当します。具体的には、相談者の登録商標が相手方の標章と同一又は類似であるか否か、相談者の登録商標の指定商品・指定役務と相手方の商品・役務が同一又は類似であるか否か、などです。

例えば、商標の類似の判断においては、判例上、外観、観念、呼称等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものとされています(最三小判平成4年9月22日、最三小判平成9年3月11日)。相手方が登録商標を使用していることを裏付ける侵害品そのもの、写真やパンフレットなどの証拠とともにその商品やサービスの取引の実情などを確認したり、裁判例等を調査して、類似の判断をすることになります。

また、相手方がどのように商標を使用(商標法第2条第3項各号)しているかや相手方の先使用権(商標法第32条)の有無等についても、検討をします。

相手方による商標権侵害があると判断できた場合、商標権者が取り得る法的措置、すなわち差止請求(商標法第36条第1項)、廃棄請求(同条第2項。ただし差止請求をすることが前提)、損害賠償請求(民法第709条)、信用回復措置請求(商標法第39条、特許法第106条)などを求めていきます。

 

2.商標権を侵害したとして警告書や通知書を受領した相談者の場合

まずは、弁護士において、相手方の商標権の登録の有無や使用の有無、商標権侵害の有無(先使用権の有無を含む)などを調査・検討します。場合によっては、相手方が、商標登録出願後、商標権の設定の登録前の段階で、警告を含む金銭的請求を内容とする通知書を送ってくることもあります(商標法第13条の2)。
検討の結果、相談者の行為について商標権侵害に該当しない場合には、相談者の代理人として、相手方に対し、商標権の侵害が認められないことを反論していきます。

他方、相談者の行為が商標権侵害に該当する場合には、その理由を相談者に説明して適切な解決方法を助言するとともに、相談者の代理人として、商標権者と交渉を行い、和解等の適切な解決を図ります。

 

3.身近にある登録商標

ちなみに、秘書の椅子はVitra社の「ROOKIE」ですが、こちらを特許情報プラットホームで検索すると、商標「ROOKIE」、名義人氏名「Vitra Patente AG」、商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務「第20類 家具、特にいす」として(国際)登録されていることがわかります。そのため、仮に、第三者が「ROOKIE」という標章を付して椅子を販売すると、商標権を侵害するということになります。

このように、商品やサービスに魅力的な名称(標章)を付すときには、事前に、他社の商標権を侵害していないか否か、商標登録出願をするか否か等の検討が肝要です。その際に、インターネットなどで、名称(標章)を検索して、同じような名称(標章)があるときは、一度、立ち止まって、専門家のチェックを受けることをお勧めします。

 

令和3年7月9日
文責 弁護士・弁理士 竹永 光太郎

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