離婚の公正証書作成時に注意すべきこと

離婚の公正証書作成時に注意すべきこと

2022/08/30

協議離婚(夫婦の話し合いに基づく合意により離婚すること)に際しては、離婚について合意するだけでなく、様々なことを取り決める必要があります。
具体的には、親権者をいずれとするか、面会交流の頻度や方法、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割等についてです。
その際には、取り決めた内容を明確にするため、また、取り決めた内容が後に果たされない事態となった場合に備えて、口約束ではなく、公正証書を作成するという方法があります。

離婚の際に作成する公正証書は、一般的に「離婚給付契約公正証書」と呼ばれます。
以下では、「離婚給付契約公正証書」を作成する際に注意すべきことについて、いくつかご説明いたします(以下、「離婚給付契約公正証書」を「公正証書」といいます)。

 

1 離婚届が確実に提出されるための配慮

協議離婚は、市町村長により離婚の届出が受理されることで初めて成立するものであり、単に夫婦間で離婚の合意をしただけでは、離婚は成立しません。
つまり、離婚を成立させるためには、離婚の合意について公正証書を作成するだけでなく、その後、必ず届出(離婚届の提出)をする必要があるということです。この点、公正証書においては、「甲と乙は、協議離婚することに合意し、離婚届出用紙に双方所要の記載をした上、甲はこれを乙に託し、乙は速やかに所轄官庁にその届出をする。」といった表現で定められるのが一般的です。
もっとも、このような定めをおいても、何らかの事情により一方が離婚届の作成に応じない、または、離婚届を託された者がこれを提出しないといった場合には、離婚は成立せず、上記公正証書の定めがあっても離婚を強制的に成立させることはできません。
そのため、確実に届出がなされるような配慮、具体的には、例えば、公正証書作成後にその場で離婚届を作成する、夫婦のうち離婚を積極的に望んでいる側に離婚届を託すといった対応を取ることが考えられます。

 

2 財産的給付が不払いとなった場合に備えた定め

養育費、財産分与、慰謝料といった財産的給付について取り決めたにもかかわらず、支払が約束通りなされないという事態に備えて、強制執行の手続をとることができる定めを整えておく必要があります。
そのためには、公正証書に強制執行認諾文言を入れておくことです。
具体的には、「甲は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。」という定めを置きます。
強制執行認諾文言があれば、後に、財産的給付の内容について裁判所の手続(養育費請求調停等)を経ることなく、強制執行の手続に移ることができます。

 

3 面会交流についての定め方

⑴ どこまで詳細に定めるべきか

面会交流について、どの程度具体的に取り決めるのかは、悩ましい問題です。
詳細に取り決めておくと、面会交流のたびに元配偶者とその日時や場所等について調整の連絡を取る必要がないというメリットがある一方で、突然他の予定が入った場合等に柔軟な対応を取るのが難しくなってしまうというデメリットもあります。
この点、裁判所の手続(家事調停、家事審判)において、面会交流の日時または頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡し方法等が具体的に定められている等、子を監護している親がすべき給付の特定に欠けることがないといえる場合には、約束通りの面会交流が実施されない場合に、間接強制決定(一定期間内に面会交流を実施しなければ間接強制金を支払うように命じること)をすることができるとされています。
これに対し、公正証書の場合、面会交流について日時等を具体的に取り決めたとしても、これをもとに強制執行(間接強制決定)することはできません。そのため、公正証書においては、例えば、「乙は、甲が月1回程度丙と面会交流することを認める。」といった簡素な定め方をするのが一般的です。
仮に、面会交流について当初から夫婦の意向に対立があり、将来的に強制執行(間接強制決定)を考えるような事態となることが想定される場合には、面会交流については、公正証書にて取り決めるのではなく、家庭裁判所における家事調停または家事審判を申し立てるべきであるといえます。

⑵ 無効となり得る定め方の例

養育費の支払いと面会交流は、交換条件となるものではありません。
そのため、「乙は、甲が第○条の養育費の支払いを怠らない限り、甲が丙と以下の条件に沿って面会交流をすることを認める。」というように、養育費の支払いを面会交流の条件とするような取り決めは、後に無効とされるおそれがあります。
また、特別な事情(DV事案等)がない限り、子が双方の親と交流することは、子の福祉にとって好ましいと考えられています。そのため、公正証書において面会交流を一切否定または禁止する定めを置くことについては、慎重に検討する必要があります。場合によっては、夫婦間で合意していても、公証人からそのような定めを置くことには応じられないとの対応を受けることがありますので、特別な事情がある場合には、事前に公証人に相談する必要があります。

 

離婚の際には、取り決めるべき事項や内容、取り決める方法等について、早い段階から弁護士に相談し、十分に検討した上で進めることをおすすめします。
お悩みの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

令和4年8月30日
文責 弁護士 安井 杏奈

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