養育費はいつまで支払うのか?

養育費はいつまで支払うのか?

2022/08/02

民法上、直系血族は「互いに扶養をする義務」(民法877条1項)を負っています。

この扶養義務の一環として、未成熟子の父母は、子の監護に要する費用の分担義務を負うのであり、父母が協議上の離婚をするときは、子の監護に要する費用の分担について協議で定め、協議が調わないとき、または、協議をすることができないときは、家庭裁判所がこれを定めるとされています(民法766条1項・2項)。

未成熟子の監護に要する費用は、婚姻中は「婚姻費用」に含まれ、婚姻解消後に子の監護者が請求する場合は、一般的に「養育費」と呼ばれます。なお、後述するように、子自身が請求する場合には、「扶養料」と呼ばれます。

それでは、父母が監護に要する費用を分担する「未成熟子」とは、どのような状態をいうのでしょうか。令和4年4月より成年年齢が20歳から18歳へと引き下げられましたが、成年年齢に達した子は「未成熟子」には該当しないということになるのでしょうか。

 

結論から言えば、未成年=「未成熟子」ではありません。

子が18歳(法改正前であれば20歳)になったから養育費分担義務はなくなったと単純に解釈することはできず、子にまつわる様々な事情を総合考慮して、「未成熟子」に該当するか否かを判断する必要があります。

なお、裁判所は、成年年齢の引き下げを受け、「今後社会情勢等が変化しない限り、子が幼い事案など、子が経済的自立を図るべき時期を異なる時期として認定、判断すべき事情が認められない事案においては、未成熟子である期間について、改正法の成立又は施行前と異なる認定、判断をする必要はなく、従前のとおり、満20歳に達する日(又はその日の属する月)までとされることになると考える」との見解を明らかにしています(平成30年度司法研究「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」)。

 

裁判例上、「未成熟子」とは、「自己の資産又は労力で生活できる能力のない者」をいうとされています。

ただし、裁判例によれば、子が現に経済的に自立していないというだけでは足りません。

具体的には、学生か否か、子を監護していない親が子の進学に同意や承諾をしているか、父母の学歴や経済状況、社会的地位、子に稼働能力はあるか等の事情を総合考慮することになります。すなわち、子が成年年齢に達しており、健康体であって、潜在的稼働能力があるというだけで、一律に未成熟子ではないと判断されるわけではありません。

例えば、近時の裁判例においては、子が成年年齢に達していても、専門学校生、大学生である場合には未成熟子と扱われる場合が多く、子がいわゆる浪人中で無職である場合も、父母の収入や学歴、社会的地位等に照らして不合理といえなければ、未成熟子と扱われています。また、一般的に稼働能力があるとされる一定の年齢になっていても、病弱である等の理由で就労ができない場合には、未成熟子に該当し得るといえます。

もっとも、子が成年年齢に達した後、いつまでも親に扶養義務、教育義務があるとして父母間の負担の問題として処理されるのには疑問があります。

このことから、子に稼働能力がない場合であっても、ある程度の年齢以上になれば、父母間の婚姻費用・養育費の問題ではなく、子から親に対する「扶養料」請求という問題として処理するのが妥当であるとされています。すなわち、子がある程度の年齢以上に達した場合には、子を監護する親が他方の親に対して子に要する費用を請求するという方法ではなく、子自身が、子を監護していない親に対して「扶養料」を請求という方法を取ることにより、扶養義務の有無や扶養料の金額等を検討するのが妥当であると考えられています。

 

子が「未成熟子」か否かは、子の監護に要する費用の分担の終期に関わる重要な問題です。子が「未成熟子」でなくなれば、婚姻費用(子の監護に要する費用も含まれている)の金額が減額され得ることとなり、また、養育費の分担義務はなくなります。

婚姻費用・養育費を取り決める場合はもちろん、現在支払っている婚姻費用・養育費が適切な金額であるのか等、お悩みの際には、まずは弁護士にご相談ください。

 

令和4年8月2日

文責 弁護士 安井 杏奈

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