逆パターン養老保険に関する最高裁判例のポイント

逆パターン養老保険に関する最高裁判例のポイント

2012/09/21

弁護士・公認会計士の松本卓(まつもと・たかし)です
今回は、平成24年1月13日最高裁判決について、簡単に説明します

 

【問題の所在】

 

いわゆる養老保険(死亡時又は満期時に保険金が下りる保険)の
保険料の法人税法上の取り扱いは、
保険金受取人が誰であるかによって異なり、
法人税法基本通達9-3-4によって、
図表1のパターン1から3のように定められています。

 

本件で問題となった養老保険の保険金受取人は、
パターン4のように定められていました。
死亡保険金と生存保険金の受取人がパターン3の場合と
ちょうど入れ替わったような関係にあることから、
このような養老保険は「逆パターン」と呼ばれ、
保険料の取り扱いが明確に定められていません。

 

本件では、パターン3と同じように、
保険料の半分を経費処理、残り半分を資産計上していました。

 

本件では、会社が経費処理した保険料(すなわち従業員が負担しなかった保険料)を、
生存保険金を受け取った従業員の所得税の計算上、
経費のように扱うことができるかが争われました。

 

(図表1)

 

 

パターン 保険金受取人 保険料の取り扱い
死亡保険金 生存保険金
会社 資産計上
従業員の遺族 従業員 経費処理
従業員の遺族 会社 経費処理(1/2) 資産計上(1/2)
会社 従業員

 

 

【最高裁の判断】

 

会社が経費処理した保険料を、
従業員がもう一度経費のように扱うことができるとすれば、
一回の保険料支払いで2回節税ができることになります。
本件では、納税者が負担しない保険料が
所得税における経費に含まれるかどうかについて、図表2のように、
高裁の判断と最高裁の判断が分かれることになりました。

 

(図表2)

 

 

高裁 最高裁
納税者が負担しない保険料の取り扱い 経費に含む 経費に含まない
所得税法34条2項の読み方 納税者以外が負担したものを経費に含むとも含まないとも読める(所得税法基本通達等は、経費に含む内容である) 「その収入を得るために支出した金額」という文言は、収入を得る主体と支出をする主体が同一であることを前提としている

 

 

租税法の条文には、
納税者が自分の納税額を明確に予測できるようにするため、
特に明確さが求められます。
しかしながら実際には、プロの裁判官でも全く反対の読み方が
されるような曖昧な条文が存在するのも現実です。
最終的には国側が勝訴した本件ですが、
納税者側勝訴という結論も十分あり得たと思われます。
税務署の言うことに「あれっ?」と思ったことのある方、
一度は条文を確認してみるといいことがあるかも??

 

【参照条文】

 

所得税法34条2項
一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額…の合計額を控除し…た金額とする。

 

 

平成24年 9月21日
文責 弁護士・公認会計士 松本卓(まつもと・たかし)

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