約款(利用規約)の変更について(事業者の方へ)

約款(利用規約)の変更について(事業者の方へ)

2024/04/10

現代では、大量かつ同種の取引を迅速かつ安定的に行うため、特にBtoCビジネスにおいて、個別の契約書ではなく、「約款」に詳細な取引条件を記載した形での契約が行われています。このような定款に関して、民法に新たに「定型約款」という項目が新設され、令和2年(2020年)4月1日に施行されています。

「約款」「定型約款」という名前は、聞き慣れない方も多いと思いますが、インターネット上の通販における「利用規約」などもこの「定型約款」に該当することが多く、実際には知らないうちに約款の影響を受けていることが多々あります。

 

・約款の内容の変更について

定型約款を利用した取引においても、個別の契約が成立することになり、通常であれば当事者はその内容に拘束されることになります。

しかしながら、例えば、サブスクリプションサービスのように長期間・継続的に行われることが多く、法令の変更や経済事情の変動などに伴い、定型約款の内容が取引の実態にそぐわなくなることも少なくありません。

一方で、定型約款に関係する利用者全員から、約款変更に関する個別の同意を得る必要があるとすれば、連絡をとるだけでも膨大な時間やコストが必要になり現実的ではなく(そもそも所在すら分からなくなってしまっていることもあります)、変更に応じない利用者がいる場合、利用者ごとに異なる不平等な契約内容となってしまいかねないおそれがあります。

そのため、改正後の民法では、このような問題意識から、個別の利用者の同意を得ることなく、一方的に定型約款の内容変更を行うことができる場合を規定しています。

 

・定型約款変更の要件

定型約款変更の要件は、次のようになっています。

【実体的要件】

定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき、または変更が契約の目的に反せず、かつ変更に係る事情に照らして合理的なものであるときのいずれかに該当する(民法548条の4第1項)。

【手続的要件】

定型約款の変更の効力が発生する時期を定め、かつ定型約款の変更を行う旨、及び変更後の定型約款の内容並びに効力発生時期を周知すること(民法548条の4第2項、3項)。

 

手続的要件である「効力発生時期」の設定や「周知」の方法についても、実務上は重要な問題を含んでおりますが、ここからは特に実体的要件について、具体的なケースをもとに見てみます。

①法令の変更に伴う手続の変更

定型約款による契約の成立後、業法等の法令の変更に伴い、事業者が利用者から必要な手続書面や情報を取得することが義務付けられることがあります。このような変更の場合、利用者側に新たな負担を求めることになり利用者に有利とはいえませんが、一般にサービスを維持するためには不可欠なものであるとされ、定型約款の変更は有効とされる可能性が高くなります。

 

②経済状況や経営環境の変化に伴うサービスや利用料の変更

取引の核心である主要なサービスを一方的に取りやめる場合、利用者にとってはもはや契約の意味が無くなってしまうことも多く、このような変更は、契約の目的に反し、約款の変更が認められない可能性が高くなります。

一方で、付帯サービス(オプション)の見直しといった、利用者にとって必ずしも重要なものとして考慮されていないような条項の変更は、約款を変更できる可能性も高いと考えられます。

また、月額利用料の値上げをするような場合、一時的な影響は軽微に見えても、サブスクリプションサービスのように長期間の利用を前提として見れば影響を看過できないことも多く、慎重な判断が必要になります。

場合によっては、周知から値上げの効力発生時期までに十分な猶予期間を設けることや希望者への無条件での契約解除を認めるなど、利用者が不利益を回避できるような対策を講じることも必要になると考えられます。

 

・約款利用におけるその他の注意点

約款の内容変更以外にも、BtoCビジネスにおける約款の利用においては、トラブルになった場合に備えた運用が十分になされているのかという観点や、消費者契約法などの法令へ適切に対応できているかといった観点からも検討を行う必要があります。

また、既に約款を導入されている事業者の方であっても、取引の数や規模が拡大するに従って、現在の運用実態と当初の約款の内容が乖離しているケースもありますので、定期的な見直しが必要になります。

そのため、このような約款の導入を検討されている方や既に約款を導入されている方は、一度約款の内容が適切なものかどうかについてご検討されることをお勧め致します。

 

※法令の内容や条文等は、本記事の作成当時のものとなっておりますので、ご注意ください。

令和6年4月10日

文責 弁護士 宮原誉邦

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