正しい動画投稿サイトのススメ(その1・超入門編)

正しい動画投稿サイトのススメ(その1・超入門編)

2012/09/17

※ 当事務所の知的財産専門部で発刊しているメールマガジンを掲載しました。

 

鴻和コンテンツ産業リーガルサポート

 

正しい動画投稿サイトのススメ(その1・超入門編)

 

<質問>

 

動画投稿サイトに投稿する動画で、BGMの音源に市販CDを使用したいのですが、問題ないでしょうか。
営利目的でないなら問題ないでしょうか。
テレビ局が番組BGMの音源に市販CDを使用するのと同じでは。

 

<回答>

 

投稿動画でBGMの音源に市販CDを使用するかどうかは慎重な判断が求められます。
営利目的でなければ当然に問題ないとされるのではありません。
テレビ局が番組BGMの音源に市販CDを使用するのと違います。
※ 投稿動画のBGMの音源に市販CDの楽曲を使用する代わりに、市販CDの楽曲を演奏してもらって録音してその演奏者に許諾を得てその録音データを使用するなど、市販CDをそのまま使用する以外の方法を採ることが賢明でしょう。

 

<解説>

 

【市販CDに関して複数の権利者が存在します!】

 

著作権法は、市販CDについて、作詞家・作曲家(・編曲者)、歌手・楽器演奏者、CD製作者を、それぞれ権利者としています。

 

作詞家・作曲家等(著作者)であれば・・・
その歌詞を歌ったものや楽曲を演奏したものをインターネット上に配信する権利を持っています。
(公衆送信権等・著作権法23条)。
歌手・楽器演奏者(実演家)であれば・・・
その歌声や演奏をインターネット上に配信する権利を持っています。
(送信可能化権・著作権法92条の2)。
CD製作者(レコード製作者)であれば・・・
そのCDを音源としてインターネット上に配信する権利を持っています。
(送信可能化権・著作権法96条の2)。

 

それぞれの権利者の許諾がないのに、投稿動画にBGMの音源に市販CDを使用することは、権利者である作詞家・作曲家等、歌手・楽器演奏者、CD製作者のそれぞれの権利を侵害することになる場合があります。

 

【歌手・楽器演奏者、CD製作者の許諾を得ていない?】

 

それぞれの権利者の許諾が得られていれば、許諾の範囲内の使用について、それぞれの権利を侵害することにはならないでしょう。
では、実際のところはどうでしょうか。

 

著名な動画投稿サイト(YouTube、ニコニコ動画、Ustream等)はJASRAC等の著作権管理団体との間で包括許諾契約を締結しています。
音楽著作物及び音楽原盤の利用に関するガイドライン
http://info.nicovideo.jp/base/license_guideline.html
JASRACは、非常に多くの歌詞や楽曲について、作詞家・作曲家等から著作権の管理を受託していて、著名な動画投稿サイトにおいては、JASRACの管理楽曲であれば(厳密にはJASRACが公衆送信権等を管理している楽曲)、作詞家・作曲家等の許諾を得たことになっています。
もっとも、注意していただきたいのは、先にあげた権利者のうち、許諾しているのはJASRAC等の管理楽曲の作詞家・作曲家等にすぎないということです。

 

すなわち、JASRACは、著作権管理団体にすぎず、JASRACの管理楽曲であっても、歌手・楽器演奏者、CD製作者の権利(著作隣接権)の管理までは受託しておらず、著名な動画投稿サイトにおいても、当然には、歌手・楽器演奏者、CD製作者の許諾を得ていません。
※ CD製作者から個別に許諾を得ているケースもあります
ニコニコ動画 許諾楽曲検索
http://www.upload.nicovideo.jp/license_search/
【歌手・楽器演奏者、CD製作者の許諾の有無による違い】

 

歌手・楽器演奏者、CD製作者の許諾の有無は、具体的にどういう違いになってくるかというと、通常であれば、
・市販CDの楽曲を自分で歌ったり演奏したりした動画であれば、作詞家・作曲家等の権利の許諾だけで済み、著名な動画投稿サイトであれば投稿しても権利侵害とならない

・市販CDの音源をBGMに使用した動画であれば、歌手・楽器演奏者、CD製作者の許諾まで必要だから、著名な動画投稿サイトでも投稿すると権利侵害となりうる
ということです。

 

例えば、「きゃりーぱみゅぱみゅ」の「つけまつける」という曲をもとに自分でMIDIを製作すれば、著名な動画投稿サイト上であれば、製作者は自由に投稿・公開することができるはずです。

 

8bit風音源できゃりーぱみゅぱみゅのつけまつける
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17041810

 

【営利目的でなければ当然に問題ない?】

 

非営利であっても権利者の許諾が不要とされる場面はかなり限定されていますので(著作権法38条参照)、営利目的でなければ当然に問題ないというのは法的には誤った認識です。

 

 

【動画投稿サイトとテレビ局は同じではない】

 

テレビ局は、動画投稿サイト等と異なり、商業用レコードの二次使用が認められています。

 

(著作権法95条、97条。
但し、テレビ局は二次使用料の支払が必要です。)
著作権管理団体であるJASRAC等との間で包括許諾契約を締結するとともに、著作隣接権管理団体である日本レコード協会等との間で包括許諾契約も締結しているようです。

 

【楽しい動画投稿ライフを♪】

 

厳密な話をしていけば、実はもっと難しい話になりますが、いずれにしても、投稿動画でBGMの音源に市販CDを使用するかどうかは慎重な判断が求められます。

 

昨今の法改正で権利侵害動画をダウンロードした側が罪に問われることになりました。
せっかく苦労して創り上げた動画でも、権利侵害があれば、安心して閲覧できず評価されることも少なくなるでしょう。

 

もとより市販CDもアーティストが苦労して創り上げたもの。
使用するには相応の敬意を払いましょう。

 

【弁護士是枝秀幸】

 

平成24年 9月17日
文責 弁護士 是枝秀幸(これえだ・ひでゆき)

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