全面的国選付添人制度の実現を!

全面的国選付添人制度の実現を!

2011/07/19

こんにちは,弁護士の赤木です。

皆さんは,未成年が罪を犯したとして逮捕された場合,手続がどのように進んでいくかご存知でしょうか?成人が逮捕された場合と比較してみます。

① 成人の場合
逮捕されて身柄を拘束されている場合,「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件」だと,貧困その他の事情により自ら弁護人を選任することができない場合には,請求があれば,被疑者段階(起訴される前の段階)から国選弁護人が選任されます(刑事訴訟法第37の2第1項)。また,起訴されて被告人となると,貧困その他の事情により自ら弁護人を選任することができない場合には,被告人の請求があれば国選弁護人が選任されます(刑事訴訟法第36条)。これは,憲法第37条第3項が,「刑事被告人は,いかなる場合にも,資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは,国でこれを附する。」と定めていることによるものです。

② 未成年の場合
逮捕された場合は,未成年であっても成人と同じく警察が捜査や取調べを行うこととなり,成人と同じ刑事手続となります。ですので,成人と同じく,身柄が拘束されていて,「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件」で逮捕されると,貧困その他の事情により自ら弁護人を選任することができない場合には,請求があれば被疑者段階で国選弁護人が選任されます。ところが,未成年は,警察の捜査や取調べが終了すると,「起訴」されて「刑事事件」の「被告人」となるのではなく,「保護事件」として扱われ,家庭裁判所に「送致」されることとなっており,「被告人」とはなりません。ですので,憲法第37条第3項の弁護人選任権保障の枠外になりますし,また,保護事件は刑事事件の手続とも異なるので刑事訴訟法の枠外になります。そして,保護事件について定めている少年法によれば,付添人(保護事件では弁護人ではなく付添人といわれます(少年法第10条第1項))の国選選任について,身柄が拘束されていて,かつ,「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」又は「死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」で送致された場合にしか国選付添人が付かないことになっているのです(少年法第22条の3,第22条の2第1項)。

分かりやすく比較しますと,成人であれば,起訴されて被告人となった場合に国選弁護人が付くかどうかに,身柄拘束の有無や犯したとされる罪の重さは関係なく,希望すれば基本的には国選弁護人が付きます。ところが,未成年の場合は,家庭裁判所で審判を受けることになっても,身柄拘束がされていなかったり,犯したとされる罪が重くない場合には,希望しても国選付添人が付かない,ということになります。

また,成人の場合は,捜査や取調べがなされている被疑者の段階で国選弁護人が付けば,その後起訴されて被告人となった後も当然国選弁護人が付きます。一方,少年の場合,被疑者段階では「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件」で国選弁護人が付く一方,家庭裁判所に送致された段階では「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」又は「死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」で国選付添人が付くことになりますが,国選付添人の方が条件が厳しいので,家庭裁判所に送致される前には国選弁護人が付いていたのに,家庭裁判所に送致された後には国選付添人は付かない,ということが起こることがあります。
例をあげると,未成年が窃盗で逮捕された場合,窃盗は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑になっています(刑法第235条)。「10年以下の懲役」というのは,「1月以上10年以下の懲役」という意味ですので,「長期3年を超え」ますが「短期2年以上」ではありません。ですので,逮捕されて警察で取調べを受けている間は国選弁護人として弁護士のサポートが受けられるのに,家庭裁判所に送られると国選付添人は付かないため,当然に弁護士のサポートを受けられるわけではなくなってしまうのです。

成人と比較して,未成年は,まだ成長途上の段階にあるため,成人よりも自分の主張をきちんと述べることができません。なのに,弁護士のサポートは,成人と比較して未成年の方が明らかに受けにくいということになっているのです。これは未成年の保護や更生を考えると不当と言わざるを得ません。身柄を拘束された未成年については,全てのケースで国選で弁護士のサポートが受けられるよう,制度を変えていく必要があります。
現在,日弁連では,観護措置決定(すなわち,裁判所に送致された少年について,裁判所が調査や審判のために少年の身柄を鑑別所に置く決定をすること)を受けた全ての未成年について,国選付添人を付けて弁護士のサポートを受けられるように,制度や法律の改正を求めていますが,成人との比較でも,また,成長途上という未成年の性質を考えても,是非とも改正されるべきと考えます。

平成23年7月19日
文責 弁護士 赤木 公(あかぎ こう)

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