訴訟費用の敗訴者負担と弁護士費用の敗訴者負担

訴訟費用の敗訴者負担と弁護士費用の敗訴者負担

2011/07/20

1.「訴訟費用は,敗訴の当事者の負担とする。」
訴訟費用の敗訴者負担を定めた民事訴訟法61条の条文です。
この条文により,勝訴した当事者は,敗訴した当事者に対し,訴訟費用を請求することができます。
例えば,私が,福岡地方(簡易)裁判所で,不当利得返還請求訴訟の判決文で「訴訟費用は被告の負担とする。」となった場合,訴訟費用の項目及び金額は以下のようになります(平成23年7月20日現在。なお,以下では民事訴訟費用等に関する法律を「法」,民事訴訟費用等に関する規則を「規則」とします。)。

①訴え提起手数料
貼用印紙額(法3条1項,法別表第一の一項)
②訴状・同副本作成及び提出費用
1500円(規則2条の2第2項1号,規則別表第二。ただし例外あり。)
③(被告が法人の場合)代表者事項証明書交付手数料
取得に必要な登記印紙代(法2条7号)+160円(規則2条の3)
④訴状副本等及び第1回口頭弁論期日呼出状各送達費用
1040円~(特別送達費用実費。書面の枚数(重さ)によって変わります。第2回以降も呼出状が送達された場合にはさらにその実費が加算されます。)
⑤(弁護士が訴訟代理人となって裁判所に出頭した場合)
1回あたり3950円(規則2条2項)×出頭回数
⑥判決正本送達費用
1040円~(特別送達費用実費)
⑦訴訟費用確定処分正本送達費用
1040円~(特別送達費用実費)

※その他,証人等の旅費・日当等や翻訳料等,法に定める費用がかかった場合にはそれらも請求できます(法2条各号参照)。

また,当事者双方が訴訟費用を負担するときは,基本的には,各当事者の負担すべき費用は,その対当額で相殺があったものとみなすとされています(民事訴訟法71条1項。)

2.弁護士費用について
さて,訴訟にかかる費用のうち,事実上大部分を占めている弁護士費用(報酬等)は,上記訴訟費用には含まれていません(ただし,法2条10号を除く。)。
つまり,法により敗訴した当事者に弁護士費用の負担をさせることができないのが原則です。
もっとも,不法行為に基づく損害賠償請求権のうち一定の場合(加害行為と弁護士費用との間に相当因果関係がある場合)には,敗訴した当事者に対し,相当範囲内の弁護士費用の負担が認められることがあります(最判昭和44年2月27日民集23巻2号441頁)。

では,なぜ弁護士費用を敗訴者に負担させず,法2条各号に列挙されたものに限定されているのでしょうか。
この点について,「弁護士報酬敗訴者負担の取扱い」に関する日本弁護士連合会の意見(平成15年8月22日)の中には,「民事訴訟における訴訟費用等の研究」(裁判所書記官研修所編)の趣旨を踏まえて,以下のように説明がされています。
① 訴訟費用が敗訴者負担制度になっているからといって弁護士報酬を訴訟費用として(もしくは訴訟費用と同様に)敗訴者に負担させるかどうかは政策の問題である。
② わが国では昭和46年に民事訴訟費用等に関する法律が制定され,訴訟費用について列挙主義がとられるようになり弁護士報酬はそこから除外された。
③ これは,敗訴した場合に負担する金額があまりに過大になると訴訟に伴う費用負担のリスクが著しくなり,その結果訴訟の利用を阻害することになることを懸念して除外されているのである。

ちなみに,フランスでは,衡平や当事者の経済的事情によって敗訴者負担をさせないことができると規定しているので,経済的弱者に対しては,各自負担又は実質的に片面的敗訴者負担制度の下で訴訟が行われているようです。

3.まとめ
弁護士費用の敗訴者負担は,敗訴の場合の一方当事者の経済的負担が大きくなるわけですから,訴訟提起自体を萎縮させる可能性がありますが,訴訟費用の敗訴者負担のように,相当程度の予測可能性(敗訴者負担の要件,負担すべき弁護士費用の金額など)が確保されたうえで採用されることには合理性があるように私は思います。

平成23年7月20日

弁護士 竹永 光太郎

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