婚外子の相続分に関する法律が変わりました!
2014/05/02こんにちは。弁護士の野村です。
みなさんは婚外子の相続分に関する法律が変わったことをご存知でしょうか?
今日は、最高裁判所の判断を受けて、婚外子の相続分に関する法律が変わったことについてお話します。
1 はじめに
最高裁判所は平成25年9月4日の決定において、婚外子(嫡出でない子)の相続分について定めている民法900条4号但し書きの規定(嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とする)が、憲法14条1項(法の下の平等)に違反すると判断しました。これを受けて民法の一部が改正され、婚外子の相続分について定めていた規定が削除されました。
もともと改正前の民法では、婚外子の相続分は、婚内子(嫡出子)の相続分の2分の1と定められていたのですが、この規定の削除によって、婚外子と婚内子の相続分は同じということになりました。例えば、夫が妻以外の女性と関係を持ち、子供が生まれた場合、将来、夫が亡くなったときの相続分は、その子供(婚外子)と妻との間の子供(婚内子)とでは相続分に差がありました。しかし、先の最高裁の決定を踏まえて民法が改正され、婚外子と婚内子の相続分は平等ということになったわけです。
そこで、以下、この民法改正における実務上の影響等についてご紹介させていただきます。
2 実務上の影響
前述のとおり、婚外子に関する相続分の規定が廃止されたわけですが、これはいつから適用されるのでしょうか。新法は、最高裁決定日の翌日(平成25年9月5日)以後に開始した相続について適用されると定められていますが、既に旧規定を前提に遺産分割を行っている場合や、最高裁決定日前に相続が発生し、現在、遺産分割協議中の事案についてはどのようになるのでしょうか。
最高裁は、平成25年9月4日の決定において、遅くとも平成13年7月(当該事案での相続開始日)当時において憲法14条1項に違反していたと判断しましたが、他方で平成13年7月当時からこの決定までの間に開始された他の相続について、旧規定を前提としてされた遺産分割の審判その他の裁判、遺産分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないとも判示しています。
したがって、この最高裁決定日以前に相続が開始している事案で、既に遺産分割が終了して法律関係が確定しているものについては影響を受けませんが、平成13年7月以降に相続が開始している事案で、未だに遺産分割が終了していない事案では最高裁決定に従った処理がなされることになります。
3 最高裁決定の意義
そもそも、何故これまでは婚外子と婚内子の相続分に差を設けていたのでしょうか。それは法律婚の尊重であると説明されていました。つまり、法律的に認められた正当な婚姻によって生まれた子供とそうでない子供の間に差を設けることが、その正当な婚姻を尊重することになり、それが正当な婚姻を奨励し、そうでない関係を極力禁止するということになると説明されてきました。また、このような制度の社会背景として、相続財産を嫡出の子孫に継承させたいという気風や法律婚以外の男女関係で生まれた子に対する差別的な意識がありました。
確かに法律婚の尊重という趣旨は理解できますが、はたして婚内子と婚外子の相続分に差を設けることが、婚姻関係にない他の異性と関係を持つことの抑止になっているのでしょうか。また、生まれてくる婚外子には何ら責任はないはずであり、婚外子であるということをもって差別的な目で見るべきではないでしょう。
最高裁決定は、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、嫡出でない子の権利が不当に侵害されているか否かという観点から判断されるべき法的問題であり、法律婚を尊重する意識が幅広く浸透しているということは、この法的問題の結論に直ちには結びつくものとはいえないと述べています。そして、旧規定の存在自体がその出生時から嫡出でない子に対する差別意識を生じかねないとも述べています。
欧米諸国ではこのような差別的規定は既に廃止されていますが、今回の最高裁決定は、諸外国の立法の趨勢や家族に対する国民意識の変化を背景として、子を個人として尊重すべきであるという本質的な価値観に立脚したものといえます。やはり、父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択しえない修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすべきではなく、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているといえるのでしょう。