痴漢事件(迷惑行為防止条例違反、強制わいせつ)の弁護活動

痴漢事件(迷惑行為防止条例違反、強制わいせつ)の弁護活動



1 痴漢事件の特徴

痴漢事件は、大きく分けて迷惑行為防止条例違反と強制わいせつの2つの種類があります。
強制わいせつ事件の刑事罰が「6カ月~10年以下の懲役」と重いのはもちろんですが、比較的軽微な条例違反事件についても痴漢が社会現象化するにしたがって刑事罰も重くなってきました。
福岡県においても、以前は「30万円以下の罰金」とされていましたが、改正によって平成24年7月現在「6カ月以下の懲役、50万円以下の罰金」、常習になると「1年以下の懲役、100万円以下の罰金」と定められています。

両罪の違いですが、「卑猥な行為」が行われた場合は迷惑行為防止条例違反、「暴行脅迫を用いたわいせつ行為」が行われた場合は強制わいせつ罪になります。強制わいせつ罪の「暴行」の定義はとても広く解釈されており、例えば下着の中まで触れたような場合は、下着の中に手を入れること自体を暴行とみて強制わいせつ罪とみなされる場合が多いです。

痴漢事件にはいくつかの特徴があります。

1つ目の特徴は、これまで犯罪とは全く無縁だった人が被疑者になることが多いという点です。痴漢と勘違いされないように、電車の中で鞄を置いて両手をあげているサラリーマンもよく見かけますが、ちょっとした勘違いによって痴漢と誤解され、逮捕されることがあります。

2つ目の特徴は、嘘の自白をする危険性が極めて大きいということです。痴漢事件では「痴漢をやっていません」と警察に対していった場合、ほとんどのケースで逮捕、勾留されて、留置場で身体を拘束されることになります。
ここで、とにかく早く釈放されたいと思って、実際は不当な濡れ衣であっても、嘘の自白をする人が後を絶ちません。

3つ目の特徴は、痴漢事件は多くの場合、被害者といわれる女性の証言が唯一の証拠となる場合も少なくありません。しかしながら、混雑した状況の中で、痴漢の犯人であると断定することが難しい場合もあります。また、たまたま手や物があたった場合には実際には痴漢行為ではないときでも痴漢行為であると勘違いする場合もあります。

2 否認している痴漢事件での弁護活動

痴漢事件では、痴漢事件の特徴を捉えた弁護活動が必要になってきます。
被疑者段階では嫌疑不十分での不起訴に向けた弁護活動や公判段階で不利にならないための弁護活動が重要になってきます。起訴された後は、無罪を獲得するため、証拠開示後の証拠の詳しい分析が重要になってきます。

まず、突然現行犯逮捕され、被害者に痴漢犯人と断言されると、その周りにいる人たちも「痴漢犯人だ」と被害者の証言に共感します。警察官も、被害者よりで話を聞いてくるので、いくらしっかりとした弁解をしたとしても信用してくれません。
これまで犯罪とは全く無縁で初めて逮捕された人は、周りは誰も自分の言っていることを信じてくれない状況となり、非常に苦しく、不安で、つらい立場になります。
その中で、唯一絶対的な味方となれるのが弁護士です。被疑者段階での弁護活動の基本は、警察署に行って非常に不安な状態になっている被疑者に対して、現在の取調の状況や内容を聞いて適切な法的助言をしていくことです。
身柄拘束されている場合、ご家族の方でも9時半くらいから16時くらいまで面会時間もわずかに限られていますが、弁護士の場合は無制限で夜遅くでも被疑者に会うことができます。

また、嘘の自白すると、極めて稀なケースを除けば、有罪となる場合がほとんどです。後になって「やっぱりやっていません」といってもほとんど認められることがありません。嘘の自白をした方の中には、警察署から出ることができても、「あの時どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」と一生後悔する方もいます。嘘の自白をしないよう被疑者を勇気づけていくことも弁護士の大事な仕事です。その意味でも、痴漢事件ではできる限り早い段階で弁護士に相談するべきですし、弁護人としては最初の被疑者段階が最も重要というぐらいのつもり弁護活動を進める必要があります。

さらに、被害女性の証言を緻密に分析することが必要になります。
被害女性は、実際には別人であるにもかかわらず痴漢犯人と思い込んで事実と反する証言をしたり、実際には痴漢行為をされたわけではないにもかかわらず、痴漢行為をされたと事実と反する証言をすることがあります。
昔は、「被害者には被告人を陥れる動機がないから信用できるが、被告人は罪を免れるために嘘をつく動機があるから信用できない」ということで、被害者といわれる女性の証言が採用されて有罪になるケースがほとんどでした。
ただ、最近になってだんだんとその風潮が代わってきています。少しずつ判決の中で簡単に被害者の証言を信用するわけにはいかないといった判断が増えてきました。
平成23年7月25日、最高裁判所において出された判決の中では、「被害者には被告人を陥れる動機がないという観点は逆に先入観で信用性の評価を誤らせるおそれがある」と補足意見の中で、今まで言われてきた被害者の証言の信用性判断基準を覆す指摘もされています。
「被害者の証言だけでは、有罪と認められるだけの合理的な疑いを容れないまでの証明はできていない」として無罪となるケースも段々と増えているのです。
弁護活動においては、被害女性の証言に客観的な事実との矛盾がないか、証言の内容が変わってきていないか、警察による誤った誘導はないかなどを徹底的に分
析していくことになります。

3 自白している痴漢事件での弁護活動

自白している場合、不起訴、執行猶予の獲得に向けて、被害者とどのように示談するかということが最も重要になってきます。
被害者は、自分の住所や連絡先を被疑者には知られたくないと思っていることが多いので、警察官や検察官を通じた連絡、被害者の指定する場所での示談を行うなど、被害者が希望した場合には被疑者に知られることはない旨を説明して安心してもらい、示談交渉を行っていきます。
また、通勤中の事件であれば、通勤路線を変更するなど、被害者が被疑者と再度会うことに対して恐怖心を抱かないよう工夫を行っていきます。

平成24年9月20日
文責 弁護士 矢口耕太郎

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