DNA鑑定と父親と子どもの法律関係について

DNA鑑定と父親と子どもの法律関係について

2014/02/19

こんにちは!福岡の鴻和法律事務所弁護士の矢口です!
元光GENJIの大沢樹生さんが、喜多嶋舞さんとの間の長男についてDNA鑑定をしたところ、大沢さんの実子でないとの報道が賑わっていましたね。

「DNA鑑定で自分が父親でないことが分かったら、子どもとの関係はどうなるのですか?」という質問をよく受けるようになりました。

今日は、父親と子どもとの法律関係について少し整理していきましょう。

民法は、結婚している夫婦から生まれた子どもを「嫡出子(ちゃくしゅつし)」(婚内子)、結婚していない男女から生まれた子どもを「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」(婚外子)として区別しています。

結婚してから200日後に生まれた子どもと離婚してから300日以内に生まれた子どもは結婚中に妊娠したと推定すると定められています。
その上で、結婚している途中で妊娠した子どもは夫の子どもであるということが推定すると定められています。

なぜこのようになっているかと言いますと、正常な結婚生活が続けられている場合は妻が貞操を守るのが一般的です。ですから、夫と妻が産んだ子どもとの間には血縁関係があるのが当然だという考え方で法律が作られたからですね。

この2段階の構造で、結婚している夫婦から生まれた子どもは、父親の実の子どもであるということが推定されるということになっています。
この推定を覆すためには、「父親」だけが「子どもが生まれたことを知ってから1年以内」に嫡出否認の訴えという「裁判」を起こさないといけません。これは、父親であることを早く確定させることで第三者の介入を防いで家庭の平和を守るという目的があります。

最近は「授かり婚」「おめでた婚」「できちゃった婚」という言葉が出てきているように、妊娠をきっかけとして結婚するというケースが増えてきました。
妊娠が結婚よりも先になるケースでは、結婚している夫婦から生まれた子どもではありますが、結婚中に妊娠しているわけではないので、自分の子どもが父親の実の子どもであるということが法律上は推定されないことになります。

ですから、この場合は嫡出子ではある(厳密には母親が選択可能)けれども、子どもが父親の実の子どもであるかどうかというのは法律上はあまり強く認めているわけではありません。

推定されない嫡出子の場合は、時間制限なく「親子関係不存在確認の訴え」を起こすことができます。
ですから、これまでの父と子を巡る親子関係をどうするかについては、法律で父親の実の子どもであることが推定されているか、推定されていないかというのが大きな分かれ目になっていました。

しかし、最近は「DNA鑑定」によって遺伝子レベルで自分の実の子どもかどうかが分かるようになってきました。「父である可能性は0%」という結果が出てきてしまった後は、大変な混乱に陥ります。

民法上、推定される嫡出子の場合には、たとえDNA鑑定で自分が父親であるということが0%ということがわかっても、もはや「子どもと父」の関係を覆すことはできないことになります。
大沢さんのケースでもこの推定が働きますから、基本的には「自分が父親でない」ということを法律上認めさせることはできないということになります。

しかし、平成26年1月、大阪家裁、大阪高裁で子どもの方から親子関係不存在確認を求める訴訟が起こされ、父親は反対しているにもかかわらず、DNA鑑定を証拠として親子関係を否定したという報道がありました。
今、最高裁にまでいっているようですが、最高裁の結論次第では法律の解釈が変わってくる可能性もあります。

ただ、この事案は母親が子どもの代理人として訴えているようです。少し通常のケースとは異なることに注意しなければなりません。

実際の実務では、推定される嫡出子のケースでも、夫、妻、本当の父親の三者間での合意があれば、調停で父親を変更することが可能です。
本来、民法上はできないはずなのですが、家庭裁判所ではそのような運用が行われています。

今、DNA鑑定は10万円程度で気軽に行うことができるようになってきました。これから、DNA鑑定が流行ることで、民法の規定も変わってくるかもしれません。

しかし、あくまで子どもと父親の推定規定は「父親であることを早く確定させることで第三者の介入を防いで家庭の平和を守る」ということに目的があります。

ある日突然、「お前は実はおれの子どもではない」と言われて新しい父親が出てきたら、子どもは大混乱に陥りますし、これまでの家庭生活が混乱に陥ることも間違いありません。
 「何でもかんでもDNA鑑定で覆る」という結論は、家庭生活を簡単に破壊することにもつながることに注意が必要です。

 平成26年2月19日

文責 弁護士 矢口耕太郎

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