遺産である不動産に関する諸問題

遺産である不動産に関する諸問題

2015/10/15

遺産である不動産に関する諸問題

相続が開始すると、不動産や預貯金、株式等々の遺産を相続人間で分割する必要がありますが、中でも、今回は不動産に関連する問題を取り上げたいと思います。

1 相続人の一人が使用している場合に明渡しを求めることができるか
⑴ 例えば、父(A)が死亡し、遺産として父名義の居住用不動産があると仮定します。相続人は、Aと長年同居していた子(Y1)と、Aとは別居していた子Y2とY3の3名です。Aの遺言はなく遺産分割協議がなかなかまとまらない中、Y1は遺産である居住用不動産に引き続き住むことができるのでしょうか。
法律上、Y1、Y2、Y3の相続分は3分の1ずつですので、遺産分割協議がまとまらない間は、それぞれが居住用不動産について3分1ずつの共有持分があります(これを「遺産共有」といいます。)。この場合に、遺産分割協議がまとまらないことに業を煮やしたY2とY3が、自分たちの共有持分を勝手に使用することは許さないとして、Y1に対し、明渡しを求めることができるのかということが問題となります。

⑵ この点については最高裁判例があり、Y1が明渡しに同意しない以上、原則としてY2とY3は明渡しを求めることはできないとされています。
その理由の一つとしては、Aの生前から居住していたY1の保護を優先すべきであって、相続人間の共有持分の多数決によって明け渡さないとならないことは相当でないと考えられるからです。

2 不動産を使用している相続人に対して金銭を請求することができるか
⑴ 明渡しが原則として認められないとして、Y1は引き続き無償で住み続けることができるのでしょうか。相続の開始によって、Y2やY3にも共有持分があるのですから、不動産を使用できないY2やY3はY1に対して、賃料相当額の金銭を請求することができるのではないかという問題があります。
⑵ この点についても最高裁判例がありますが、具体的な事実関係によって結論が変わってきます。
上の事例のように、Y1が長年Aと同居していたような場合には、少なくとも遺産分割協議がまとまるまでの間は、無償で住み続けることができる可能性が高いと考えられます。この場合には、遺産分割が最終的に確定するまでは、AとY1との間に、Y1が無償で利用することができる旨の合意があったと推認でき、Aの地位をY2とY3が承継すると考えられるからです。
もっとも、AとY1との関係性や同居の有無、不動産の利用態様等の事実関係によっては結論が異なる可能性もあるため、個別の事案を詳細に検討する必要があります。

3 このような相続人間の紛争に発展することなく円満に遺産分割協議がまとまることに越したことはありませんが、理論的にも難しい問題を孕んでおり、専門家による解決が望ましい事例の一つとして言えます。

平成27年10月15日
文責 弁護士 大塚祐弥

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