大地震災害と住宅ローン
2011/03/12原子力発電所の事態がどんどん悪化していって、不安が重なっていきますね。
命を懸けて冷却作業を続けている作業員の方々、どうかご無事でありますように。
今日は大地震と住宅ローンについてのお話です。
★住宅ローンを組んで新築の家を建てましたが、大地震で家が崩壊しました。残りの住宅ローンはどうなるのでしょうか。
住宅ローンは、銀行と住宅ローンを組んだ方との、お金を貸した借りたの消費貸借契約です。
たとえ、大地震が起こって家が全部壊れたとしても、お金を借りた契約は消えることはありませんので、引き続いて支払わなければなりません。
ただ、住宅ローンの支払計画について困った場合、このような通常では考えられない大地震の場合には、一定の間住宅ローンの支払いをストップしたり、分割払いの負担を軽くしたりという方法について銀行が対応してくれるケースが多いです。
今回の地震で住宅ローンの支払いが遅れた人は、まずは銀行と話をして、対応策を提案してみましょう。
また、政府系の金融機関では、住宅ローンの支払いは残っていても、利息を少なくする措置をとってくれることもあります。
地震が原因で住宅ローンの支払いが遅れた場合、これは自分ではどうしようもないものですから(帰責性がないといいます)、遅れたからといって一気に繰上げ弁済を請求されること(期限の利益の喪失といいます)は特約がない場合には原則としてありません。
ただし、特約を銀行はつけている場合が多く、この場合は支払いが遅れると期限の利益を喪失することになります。ですが、これは銀行の裁量に任されることになるので、今回の事態で全部繰り上げ弁済を請求されることは多くないと思います。仮に請求された場合でも、あきらめずに交渉していくことが大事です。
仮にそれでも交渉できず、このままでは支払を継続することができない場合には、個人再生手続という手法をとることによって、支払いが遅れた分の期限の利益を回復させることができます。また、場合によっては、弁済期間を延長させたり、しばらくの間弁済を猶予してもらったり、元本や利息の一部カットが可能になることもあります。
★壊れた家には、銀行の住宅ローンを担保するために、抵当権がついていました。抵当権はどうなるのでしょうか。
抵当権がついている家が全部壊れてしまった場合、家は単なる木材になってしまいますので、抵当権は目的を失って消滅します。
ただ、地震保険をかけていた場合には、地震保険の金額に対して抵当権が及ぶことになります。難しい言葉で、「物上代位」といいます。
この場合には、支払われた地震保険の保険金で銀行への住宅ローンを支払うことになります。
ただ、銀行によっては、地震保険の保険金が直接災害にあった方にわたるような特別の措置をとっているところもあるようですので、一度相談してみてください。
住宅ローンの問題をみると、法律の原則も契約書の特約で修正されてしまい、結局は銀行がどのように考えるかということに左右されることが多いです。
ただ、こんな緊急時には銀行も思いやりの措置をとってくれた過去が多数あります。あきらめずに、交渉していきましょう。
文責 弁護士 矢口耕太郎