営業秘密・企業秘密漏洩事案について

営業秘密・企業秘密漏洩事案について

2013/05/13

1.営業秘密・企業秘密が漏洩・不正使用された側からの相談・依頼の場合

 

(1)法律上保護される秘密かの検討

 

まずは、弁護士において、漏洩・不正使用された営業秘密・企業秘密自体が、法律上保護されるものなのかどうかを検討します。
相手企業や従業員との間で、秘密保持に関する契約書や契約条項、あるいは就業規則の定めや同意書取り交わしなどがない場合、営業秘密や企業秘密は、不正競争防止法という法律で保護されています。
しかし、不正競争防止法で保護されるには、①有用性、②秘密管理性、③非公知性という3つの要件を満たす必要があります。
たとえば、スキャンダル情報などは有用性に欠けるとして保護の対象外ですし、営業秘密・企業秘密としての管理体制が杜撰であれば、秘密管理性の要件が欠けることになり、不正競争防止法では保護されません。
また、秘密保持義務が契約書や就業規則等で定められている場合でも、漏洩・不正使用された営業秘密が、契約書や就業規則等で秘密保持義務が課されている秘密に含まれているかどうかも検討する必要があります。
したがって、漏洩・不正使用されている営業秘密や企業秘密がどのようなものなのか、契約書や就業規則ではどのように秘密保持義務が定められているか、その秘密の管理体制がどのようになっていたかということを具体的に検討し、法律上保護されるものなのかどうかを判断します。

 

(2)漏洩・不正使用の事実や証拠の検討

 

次に、秘密の漏洩・不正使用の有無やその証拠の有無・内容を調査・収集します。
営業秘密や企業秘密などは、形があるものではありません。
また、物品が盗まれる場合は物品がなくなるために盗まれたことが分かりやすいですが、情報(営業秘密)が漏洩・不正使用されても、もともと企業にあった営業秘密自体がなくなるわけではないため、漏洩や不正使用があったかどうかは簡単に分かるわけではありません。
そのため、交渉においても裁判においても、相手方が漏洩や不正使用の事実を争ってくることがほとんどです。
しかも、相手方が身構えてしまえば、漏洩や不正使用の裏付けは余計に確保が難しくなります。
そこで、交渉や裁判に入る前の段階で、漏洩や不正使用があったと思われる理由や根拠を十分に精査し、それを裏付ける資料や証拠を収集・確保しておくことが極めて重要となります。

 

(3)助言・事件受任

 

そのうえで、営業秘密の漏洩・不正使用があると判断できれば、漏洩者や不正使用者に対してとりうる法的措置、すなわち差止請求、損害賠償請求権、懲戒処分等のうち、事案に照らしてもっとも適切な法的措置を助言します。
そして、相談者の代理人として、侵害者に対し、上記法的措置を採りうることを前提に、任意の交渉や訴訟をしていくことになります。
また、まだ十分な証拠や資料を確保できていない場合には、交渉や警告を先延ばしにしても、証拠や資料の収集を継続した場合もありますので、どのタイミングでどのように進めていくのかという戦略的な観点も欠かせません。

 

2.営業秘密・企業秘密が漏洩・不正使用されたとの主張を受けている側からの相談・依頼の場合

 

(1)法律上保護される秘密かの検討

 

この場合も、まずは、弁護士において、法律上の保護を受ける営業秘密や企業秘密なのかどうか、漏洩や不正使用の事実はあるか否かという点について調査・確認します。
また、相手方においていかなる根拠で主張をしてきているのか、どのような証拠や資料をすでに確保しているかという点についても検討します。

 

(2)漏洩・不正使用を争う場合

 

そのうえで、営業秘密や企業秘密の漏洩・不正使用には当たらないという場合には、相談者の代理人として、的確な反論をするとともに、訴訟を提起されて被告の立場となった場合には、被告訴訟代理人として訴訟行為を行うことになります。
こちら側の場合であっても、漏洩や不正使用ではないことの証拠や資料があれば、その収集を急ぐべきであることは変わりありません。

 

(3)その他の対応

 

なお、相談者の行為が結果的には不正使用に該当するけれども、他の企業から漏洩された営業秘密とは知らなかったというような場合には、対応を検討し、場合によってはすぐにその営業秘密の使用を止め、相談者の代理人として相手方に事情を説明し、損害賠償請求等を受けないように対応することもあります。

 

平成25年5月13日
文責 弁護士 甲木 真哉

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