刑法の一部改正が平成29年6月16日に成立し、同年7月13日から施行されています。

刑法の一部改正が平成29年6月16日に成立し、同年7月13日から施行されています。

2017/09/28

刑法の一部改正が平成29年6月16日に成立し、同年7月13日から施行されています。

 

主な改正点の1点目は、強姦罪の強制性交等罪への変更です。

改正前の刑法177条では、「女子を姦淫」することを「強姦」と定めて、被害者を女性に限定し、処罰対象となる行為も性交に限定していました。

けれども、改正後の刑法177条では、「女子」という限定はなくなって、被害者の性別は問わないこととされ、処罰対象となる行為も「性交、肛門性交又は口腔性交」(以下「性交等」といいます。)に拡大されています。

ちなみに、被害者が13歳以上の場合は「暴行又は脅迫」が必要で、13歳未満の場合には不要であることは従前と同じです。

強制性交等罪が成立する場面は強姦罪よりも広く、女性が加害者となって男性に性交等を強いる場合にも強制性交等罪が成立することになります。

なお、強姦罪の強制性交等罪への変更に併せて「準強姦罪」も同様に「準強制性交等罪」に改められます。

 

主な改正点の2点目は、性犯罪の非親告罪化です。

改正前の「強姦罪」及び「準強姦罪」、「強制わいせつ罪」並びに「準強制わいせつ罪」等は、被害者の告訴がなければ加害者を起訴することができませんでした。

このように性犯罪が親告罪とされていたのは、起訴することによって被害者のプライバシー等が害されるおそれがあるので、被害者の意思を尊重する必要があると考えられていたからです。

けれども、現在の性犯罪の実情として、犯罪被害によって肉体的、精神的に多大な苦痛を負った被害者にとっては、告訴するか否かの選択が迫られているように感じたり、また、告訴したことにより被告人から報復を受ける場合があるのではないかという不安を持つ場合があるなど、親告罪であることによってかえって被害者に精神的な負担を生じさせている状況が認められました。

そのため、改正後は被害者の告訴がなくても加害者を起訴することができるようになったものです。

なお、改正刑法の施行前に罪を犯していた場合も、施行の際に既に告訴が取り下げられている場合等を除いて非親告罪になりますので注意が必要です。

 

主な改正点の3点目は監護者による性犯罪に関する規定の新設です。

「監護者わいせつ罪」(改正後の刑法179条1項)、「監護者性交等罪」(改正後の刑法179条2項)が新設されて、18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者や性交等をした者は、暴行又は脅迫を用いない場合であっても「強制わいせつ罪」、「強制性交等罪」と同様に処罰されます。

ここにいう、「現に監護する者」とは、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点、生活上の指導監督などの精神的な観点から依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係性に継続性が認められることが必要と考えられています。

例えば、実の親や養親は「現に監護する者」に該当し得る一方で、スポーツのコーチや教師は生活全般にわたった関係性がないため「現に監護する者」には該当し得ないと考えられています。

 

主な改正点の4点目は強盗強姦罪の構成要件の見直しです。

強盗強姦罪(改正前の刑法241条前段)は、法定刑が「無期又は7年以上の懲役」と重くされていましたが、「強盗が女子を強姦したとき」に成立するとされていました。

そのため、強姦した後に強盗の犯意を生じて強盗をした場合には強盗強姦罪は成立せず、その場合には、強姦罪(3年以上の有期懲役刑)と強盗罪(5年以上の有期懲役)の併合罪(5年以上30年以下の有期懲役)となるにとどまったため、科すことができる刑が大きく異なりました。

けれども、単独でも悪質な行為である強盗行為と強姦行為の双方を行った場合の悪質性や重大性を考慮すると、その先後関係で科すことのできる刑に大きな差異があることは不合理です。

そのため、今回の法改正では、強盗行為と強制性交等罪に当たる行為が同一の機会に行われた場合には、その行為の先後関係を問わずに、強盗・強制性交等罪が成立し、法定刑は「無期又は7年以上の懲役」とされることとなりました(改正後の刑法241条1項)。

 

主な改正点の5点目は性犯罪に関する法定刑の引き上げで、以下のような法定刑の引き上げがなされています。

改 正 前 改 正 後
強姦罪

(法定刑)3年以上の有期懲役

強制性交等罪

(法定刑)5年以上の有期懲役

強姦致死傷罪・準強姦致死傷罪

(法定刑)無期又は5年以上の有期懲役

強制性交等致死傷罪

(法定刑)無期又は6年以上の有期懲役

なお、法定刑の引き上げに伴って、強姦罪や強姦致死傷罪よりも重い犯罪類型として定められていた「集団強姦罪」と「集団強姦致死傷罪」は廃止されます。

 

このように、刑法は性犯罪について非親告罪化などの大幅な変更をしていますので、今後は刑事弁護をしていく上でも注意が必要です。

平成29年9月28日
弁護士 浦 川 雄 基

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