債権者から債務免除を受ける場合の税務上の問題

債権者から債務免除を受ける場合の税務上の問題

2015/06/06

法人の債務整理をする場面で、債務者が、債権者から債務免除を受けることがあります。

このような場合に、税務上はどのような問題が発生するのでしょうか。

次の事例で、債務整理をする債務者(法人)が、債権者から負債10億円のうち8億円の債務免除を受ける場合を考えてみます(説明を簡易化するために、事案を単純化しています。)。

【事例】

資産8億円(バブル期に8億円で購入した不動産で、帳簿価格が8億円。しかし、現在の時価は2億円)

負債10億円(銀行借入10億円)

青色欠損金1億円(※)

期限切れ欠損金1億5000万円(※)

実効税率(法人税、住民税、及び事業税を合わせた税率)は35%

※:青色申告した期の赤字(課税所得のマイナス)は、翌期以後一定期間繰り越して将来黒字化した期の損金とすることができ、この繰越額を青色欠損金と呼んでいます。

一方、税法が認めた繰越期間(平成20年4月1日以後に終了する事業年度に生じた欠損金については9年、それ以前は7年となります。)を経過した欠損金は損金算入できず、これを期限切れ欠損金と呼んでいます。

 

【原則的な課税関係】

債務者が8億円の債務免除を受けた場合、会計上8億円の特別利益を計上する必要があります。したがって税法上も8億円が債務者にとっては益金となります。

そうすると、青色欠損金1億円を控除しても7億円が債務者の課税所得となり、債務者には2億4500万円もの税負担(7億円×35%)が発生します。

これでは、せっかく債権者から債務免除を受けても、債務者は、2億4500万円の税金を払わなければならず、重い税負担で結局倒産が避けられません。

 

【期限切れ欠損金の利用に関する特則】

期限切れ欠損金は損金算入できないのが原則ですが、民事再生等の法的再建手続や私的整理手続の中で債務免除がなされる場合、期限切れ欠損金の損金算入が認められます。

したがって、本事例では益金(債務免除益)8億円から青色欠損金1億円に加えて期限切れ欠損金1億5000万円も控除することができ、課税所得を5億5000万円まで減少させることができます。

ただし、本事例ではそれでも債務者に1憶9250万円(5.5億円×35%)の税負担が発生することになります。

 

【資産の評価損益の計上に関する特例】

時価の下落による資産の評価損は、実際に資産を売却しなければ税法上損金とならないのが原則です。

この点、本件で含み損のある不動産を時価の2億円で売却すれば6億円の売却損が発生し、この売却損は損金となります。そこで、不動産を売却することができれば、債務免除益からこの損金を控除することができ、税負担を免れることができます。

しかし、不動産が債務者の事業継続に不可欠な場合等では売却できないこともあります。

このような場合であっても、債務者が民事再生等の法的再建手続を取る場合は例外的に評価損を損金計上することが認められます。

例えば、本事例で、債務者が民事再生手続を取った場合、益金(債務免除益)8億円から不動産の評価損6億円を損金として控除することができることになります。また、上述した期限切れ欠損金の利用に関する特例をあわせて用いることで、課税所得はゼロとなり、債務者に税負担は発生しないことになります。

なお、資産の評価損を損金として計上する場合には、青色欠損金に優先して期限切れ欠損金を控除することができるため、期限切れ欠損金1億5000万円を優先して使うことで、青色欠損金1億円のうち5000万円を翌期以後に繰り越すこともできます。そのため、再建の成果により翌期以後黒字化した場合に、利益から欠損金を控除することで税負担を抑えることも可能になります。

 

このように、債権者から債務の免除を受ける場合には、多額の法人税・住民税・事業税を課税される可能性があります。

そこで、債権者から債務免除を受けられる場合であっても、弁護士・公認会計士・税理士等の債務整理に精通した専門家の相談を事前に受けることをお勧めいたします。

 

文責 鴻和法律事務所 事業再生・倒産専門部

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