カンニングと偽計業務妨害罪
2011/03/11京都大学の入試でネットを使ったカンニング事件が、とうとう逮捕にまで発展してしまいました。
「偽計業務妨害罪」という犯罪はあまり聞きなれない方も多いと思います。
「偽計を用いて」「業務を妨害した者」「は、三年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」(刑法233条)とされています。
例えば、インターネットの掲示板に「駅を爆破する!」とかいう嘘の書き込みをした場合に警察が出動してしまって、「警察業務を妨害した」という形で逮捕されるようなケースが問題となります。
「偽計」というのは、難しい言葉でいえば、「他人に錯誤を生ぜしめる不公正な策略、陰険な謀略的手段」をいいます。
要するに「ズル」とか「嘘」のことですね。
今回は、「ズルをして入学試験の業務を妨害した」ということが罪に問われています。
この偽計業務妨害罪は「妨害」の範囲がすごく広く解釈されていますので、実はカンニングのほとんどはこの罪に当たってしまいます。ただ、普通はほとんど問題になりません。
ですので、「え?カンニングで逮捕??」と感じる弁護士も多いのです。
ちょっとカンニングのやり方が世間を騒がせすぎました。
私としては、「カンニング」という側面よりも、「まさに試験中に試験問題が世間に漏れていた」という点のほうがインパクトが強かったです。
最近仕事では、「調査のときは、まずググれ!!」という言葉が当たり前のようになってきました。
いかに早く正確に検索できるかという能力も、仕事の際には一つの能力として評価されます。
ただ、入学試験は純粋に自分の「頭脳」だけが武器として使える試験です。
「他の力に頼らずに、自分の力だけで勝負する」ということが問われています。
逮捕された受験生も、今回の件は反省して、来年は自分の力でしっかり勝負してほしいですね!
文責 弁護士 矢口耕太郎