「ネット選挙運動解禁」をもっと詳しく~電子メールを送信できる者は誰か~
2013/05/13こんにちは!弁護士の野村と矢口です。
今日は②電子メールを利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布の解禁について、少し具体的にお話します。
今回の改正で多くのインターネットを利用する選挙運動については解禁されましたが、「電子メール」だけは特別扱いされています。
まず、「電子メール」を使って選挙運動ができるのは、
「立候補者」と「政党等」に限られています。(改正公職選挙法142条の4①)
つまり、私たち第三者は電子メールを使って選挙運動をすることができません。立候補者などから送られてきたメールを転送することもできません。
「ネット選挙運動解禁!」と安易に考えて第三者が電子メールを使った選挙運動をしてしまうと、禁錮2年以下、罰金50万円以下に加えて公民権停止の制裁もあるので注意が必要です。
なぜ、私たち第三者が電子メールを利用できないかというと
電子メールは他の手段よりも誹謗中傷やなりすましによって悪用されやすいということや、複雑な送信先の制限ルールがあるので何も知らない人が簡単にメールを使ってしまうと処罰される可能性が高いこと、大量の迷惑メール等が増えることが挙げられています。
では、立候補者や政党等はどのような人に電子メールを送ることができるのでしょうか。
ある日突然、たくさんの立候補者から大量のメールが自分のメールアドレスに届いたとしたら、とても迷惑ですよね。
この事態を避けるために、選挙運動用のメールを送る先は
立候補者や政党等に対して自分のメールアドレスを「自ら通知」した人のうち、
①選挙運動用の電子メールを送られることに同意した人
②普段から政治家が発行しているメールマガジンなどの政治活動用電子メールを継続的に受信している人であって、選挙運動用の電子メールを送られることを拒否する通知をしていない人
に限られることとされています。
ですから、立候補者や政党だからといって、勝手に名簿を買って有権者のメールアドレスを集めたり、公開ホームページに記載してあるメールアドレスを集めたりして、一斉にメール送信するようなことはできません。
名刺交換やプロフィールシートを立候補者や政党に渡したり、有権者が立候補者や政党に対してメールを送ったり、後援会の入会申込書に電子メールアドレスを書いた場合でなければ、「自ら通知」した人とは言えないからです。
選挙運動メールを送るための送信先を集めるのもかなり大変です。
また、集めた後も①②のルールがあるので、集めたからすぐにメールを送ることができるというわけでもありません。
電子メールを使った選挙運動は少し複雑な部分があるので、次回もう少し詳しくお話しますね。
平成25年5月13日
弁護士・登録政治資金監査人 野村 俊輔
弁護士・登録政治資金監査人 矢口 耕太郎