「ネット選挙運動解禁」をもっと詳しく~「選挙運動」の意義~

「ネット選挙運動解禁」をもっと詳しく~「選挙運動」の意義~

2013/05/07

こんにちは!弁護士の野村と矢口です。

 

先月成立した改正公職選挙法によって、インターネット等を利用した選挙運動ができるようになりました。

 

「え、これまではできなかったの?」
「そもそも今回の改正で何ができるの?」
「なりすましや誹謗中傷が増えるのでは?」

 

などなどいろんな疑問があると思いますが、今後の選挙運動が大きく変わって私たちの生活にも影響が出てくると思いますので、これから素人的な疑問から専門的な疑問までわかりやすく解説していきたいと思います。
まず、よくホームページの記事などで「ネット選挙解禁!」という言葉が出ていますが、今回解禁されたのはネット「選挙運動」であってインターネットで投票ができるようになったわけではありません。

 

そこで、今日は「そもそも選挙運動とは何か?」ということと「選挙運動はいつでもできるのか?」を考えてみましょう。

 

最高裁昭和38年10月22日決定等によれば、
選挙運動とは
「一定の選挙につき、一定の候補者を当選せしむべく投票を得若しくは得せしむるにつき、直接間接に必要かつ有利なる周旋勧誘若しくは誘導その他諸般の行為をなすことを汎称する」とされています。

 

難しい言葉なので今の言葉でわかりやすくいいますと
「特定の選挙について、特定の候補者を当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」が選挙運動とされています。

 

この選挙運動は、公職選挙法の129条によって「選挙の公示・告示日から選挙期日の前日まで」しかすることができないとされています。

 

では、例えば今この時点において、「夏に予定されている参議院選挙の立候補予定者である●●氏や●●党の候補者に参議院選挙の際には一票を入れてください!!」とホームページのブログやツイッター、フェイスブックにアップすることができるでしょうか?

 

上記判例に当てはめて考えてみましょう。

 

「特定の選挙」には任期満了が近づいているようなおおよその時期が一般的に予測できる状況にあれば選挙は特定されると解釈されていますので、今年の夏の参議院選挙については、任期満了が近づいていますから「特定の選挙」と言えます。

 

また、「特定の候補者」には将来立候補しようとする者も含まれ、1人であることを必要としないと解釈されていますので、たとえ立候補前でも「特定の候補者」に当たりますし、「政党の候補者全員」であっても「特定の候補者」に当たります。

 

今回のケースでは、当選させるために「一票を入れてください」と記載しているわけですから「投票を得させようとするために直接的に必要で有利な行為」に当たりますね。

 

ですから、このブログなどへのアップは、「選挙運動」に当たります。

 

そして、選挙運動は「選挙の公示・告示日から選挙期日の前日まで」しかすることができません。

 

したがって、まだ選挙の公示がされていない段階でブログなどに、「夏に予定されている参議院選挙の立候補予定者である●●や●●党の候補者に参議院選挙の際には一票を入れてください!!」とアップする行為はできないということになります。

 

いくら「ネット選挙運動解禁!!」といっても、選挙運動ができる「時期」については何も変わっていませんので、ブログやフェイスブック等を使った選挙運動を行う場合には注意しましょう。

 

平成25年5月7日
文責
弁護士・登録政治資金監査人 野村 俊輔
弁護士・登録政治資金監査人 矢口 耕太郎

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