「いじめ」と損害賠償請求について
2015/04/01子どもの学校生活ではしばしば「いじめ」が問題となることがあります。
福岡市でも、私立高校に通う男子生徒に対し、約2年間近くに渡って執拗に暴行を繰り返したことが原因で男子生徒を自殺に追い込んだとして、いじめと自殺との因果関係は明白であると結論づけた第三者委員会の報告書を学校と遺族に提出したという報道がありました。
「いじめ」と一言で言っても、その態様は様々であり、殴る蹴る、物を投げ付けるといった、相手の生命や身体を脅かす態様もあれば、無視する、方言や容姿をからかう、物を隠すといった態様もいじめと表現することもあります。
なお、平成25年9月28日施行されたいじめ防止対策推進法では、「いじめ」を「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義し、国や地方公共団体、学校、保護者等のいじめ防止に関する責務を定めています。
これまでの裁判例によれば、一般的には、相手に怪我を負わせるような暴力を伴う行為は違法性が認められ、いじめ行為によって生じた損害について賠償を求めることが可能であると考えられています。
他方で、無視する、方言や容姿をからかう、物を隠すといった行為については、もちろんそれ自体、被害生徒に精神的苦痛を与える行為ではあるものの、直ちに違法行為であるとは認められない傾向にあります。というのも、子どもの学校生活では多かれ少なかれ良く起こりがちであり、学校教育を通じて改善が図られ子どもは成長していくものであると考えられているからです。もっとも、このような行為であっても、執拗かつ長期にわたって繰り返されてきた場合には違法性を帯びる可能性はあります。
そもそも、いじめ行為は学校生活の中で秘密裏で行われることが多く、どのような行為が行われたかという事実を認定すること自体が困難な側面を持つ問題でありますが、いじめが社会問題化したことに伴い、報道のように、第三者機関が設置され事実関係を調査することも行われています。
そのような調査報告を受け、今後は被害の回復と再発に向けた取組みが重要になってくると考えられます。
平成27年4月1日
文責 弁護士 大塚祐弥