窃盗事件の弁護活動
1 窃盗事件の特徴
窃盗罪と一言にいっても、その態様は様々です。空き巣や万引き、ひったくり、車上荒らし、下着泥棒、スリ、置引きなど、これらの行為は全て窃盗罪が成立し得ます。
ただし、同じ「他人の物」を取る行為であっても,例えば,暴行や脅迫という強硬な手段を使って物を取る行為は,窃盗罪より刑の重い「強盗罪」が成立する可能性がありますし(5年以上の懲役刑),更に被害者に怪我を負わせた場合には「強盗致傷罪」が成立する可能性もあります(無期または6年以上の懲役刑)。特にひったくり行為の場合には、窃盗罪なのか強盗(致傷)罪なのかが問題となり争われるケースが多いです。
また、通常の窃盗罪(刑法235条)であれば、1月以上10年以下の懲役または50万円以下の罰金刑ですが、過去10年以内に3回以上、窃盗(未遂)罪で6か月以上の懲役刑を受けたことがある場合には、「常習累犯窃盗罪」(盗品等の防止及び処分に関する法律3条)という通常の窃盗罪よりも更に刑の重い犯罪が成立し得ます。その場合、最低でも3年以上の懲役が科されることになっています。
このように、行為態様や前科によっては、単純な窃盗罪が成立するとは限らないことに注意が必要です。
2 窃盗事件の弁護活動
(1)被疑者段階における活動
争いのない窃盗事件においては,勾留されて起訴されるまでの10日間から20日間の限られた時間の中で,被害者に対して被害弁償を行い,被害者と示談を交わすことが大切です。行為態様や被害金額,前科の有無等にも左右されますが,被害者と示談を交わすことによって不起訴処分を得る可能性が高まりますし、不起訴処分になれば「前科」はつきませんので,まずは不起訴処分獲得に向けて迅速に行動します。
被害弁償の際には、例えば、鍵を壊したり、女性宅に侵入して物を取ったりした場合には、物品の損壊や引っ越し費用の弁償まで求められるケースもあるので、弁護士が間に入って必要かつ適切な範囲で交渉をまとめ示談に結びつける必要がありますし、また、被害者(被害店舗)が被害弁償金の受取りを拒否するケースもあるので粘り強く交渉を行っていきます。
実際には窃盗を行っていないにもかかわらず、捜査機関から窃盗の容疑をかけられてしまった場合には、どのような証拠から容疑をかけられているのか検証した上で、接見を通じて取調べに対する対応等を適切にアドバイスするとともに、証拠が不十分であることを捜査機関に対して主張し、不起訴処分の獲得に向けて活動することになります。
また,逮捕時点では,窃盗罪という罪名がついていたとしても,必ずしも,窃盗罪の罪名で裁判になるとは限らず、逮捕後の捜査により、強盗(致傷罪)で起訴される可能性も十分にあります。特にひったくり行為では、強盗(致傷)罪で起訴されないように、被疑者段階において、捜査機関に有利な自白調書がとられないように、頻繁に接見を行い、取調べに対する対応についてアドバイスを行っていきます。
(2)被告人段階における活動
逮捕・勾留された後、起訴された場合には引き続き身体拘束が延長されるため、早期の身柄解放を目指して保釈の申請を行います。
窃盗罪や強盗(致傷)罪で起訴された場合であっても,検察官が主張する犯罪の成立を争うための立証活動を行ったり,執行猶予の獲得に向けて示談書や嘆願書といった有利な証拠を提出したりするなど,事案に応じた弁護活動を行います。
窃盗を過去にも繰り返し行ってきたというような場合には、生活資金がないが故に犯罪に染まってしまい、被害弁償を行う資力がないというケースも少なくありません。その場合には、単に裁判で反省している旨を真摯に訴えたとしても説得的ではなく、二度と同じ犯罪を繰り返さないためにも、例えば監督者を探し出したり、生活保護の申請を支援したりする等、今後の生活再建のための手当てを行う必要があります。
このように、他人の物を取る行為と言っても様々な事案がありますので、事案に応じた弁護活動を行っていきます。
平成25年4月5日
文責 弁護士 大塚祐弥