高次脳機能障害について

高次脳機能障害について

2014/12/05

~高次脳機能障害~

 

こんにちは。弁護士の平位です。

交通事故案件で問題となる高次脳機能障害は、弁護士が扱う交通事故案件の中でも、適切な賠償を得る為には専門的な知識を必要とする難解な部類に属します。

今回は、交通事故案件で問題となる脳外傷による高次脳機能障害についてご理解頂く為に、その概要をご説明したいと思います。

 

(1)脳外傷による高次脳機能障害とは

「脳外傷による高次脳機能障害」とは、事故により脳外傷が発生した被害者について、その回復過程において生じる認知障害や人格変性等の症状が、外傷の治療後も残存し、就労や生活が制限され、時には社会復帰が困難となる障害を総称するものです。

脳外傷による高次脳機能障害は、「見過ごされやすい障害」という特性から、これを後遺障害として的確に評価することが求められたため、自賠責保険の損害調査を行う損害保険料率算出機構においては、平成13年1月より「脳外傷による高次脳機能障害」の残存を疑わせる事案を特定事案と位置付け、これに対する専門的知見を有する医師等による審査体制(「高次脳機能障害専門部会」)を設置することにより、より慎重な後遺障害の認定が行われるようになりました。

以降も、随時損害保険料率算出機構内では委員会が設置され問題点等が検討されており、平成23年3月にその結果が「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について(報告書)」として公表されています。

(2)特徴(上記報告書を参考・引用)

①典型的な症状

認知障害…記憶・記銘力障害、注意・集中力障害、遂行機能障害などで、具体的には新しいことを覚えられない、気が散りやすい、行動を計画して実行することができない、など

行動障害…周囲の状況に合わせた適切な行動ができない、複数のことを同時に処理することができない、職場や社会のマナーやルールを守れない、話が回りくどく要点を相手に伝えることができない、行動を抑制できない、危険を予測・察知して回避的行動をすることができない

人格変化…受傷前には見られなかった発動性低下と抑制低下であり、具体的には自発性の低下、気力の低下、衝動性、易怒性、自己中心性などとして現れる。なお、これらの症状は軽重があるものの併存することが多い。

 

②社会生活適応能力の低下

①の症状が発症した場合、社会生活への適応能力が様々に低下することが問題です。社会生活適応能力の低下は就労や就学などの社会参加への制約をもたらすとともに、人間関係や生活管理などの日常生活活動にも制限をもたらします。

 

③見過ごされやすい障害

脳外傷による高次脳機能障害は、種々の理由で見落とされやすいです。例えば、急性期の合併外傷のために診療医が高次脳機能障害の存在に気付かなかったり、家族・介護者は患者が救命されて意識が回復した事実によって他の症状もいずれ回復すると考えていたり、被害者本人の場合は自己洞察力の低下のため症状の存在を否定していたりする場合などがあり得ます。

 

(3)自賠責実務の後遺障害認定のポイント

①相当程度の意識障害の存在

脳外傷による高次脳機能障害は、意識消失を伴うような頭部外傷後に起こりやすいことが大きな特徴です。

脳外傷直後の意識障害がおよそ6時間以上継続するケースでは、永続的な高次脳機能障害が残ることが多いとされています。

②画像所見上の障害の存在を裏付ける異常所見

  脳損傷(脳挫傷、血腫、脳内出血等)の発生を裏付ける画像と事故後の脳萎縮・脳室拡大画像

③特徴的な精神症状の存在

  脳外傷による高次脳機能障害の特有の症状等を踏まえて、各症状の有無とその程度を診療医に照会するため「神経系統の障害に関する医学的意見」が用いられており、また、同様の視点から、家族・介護者に照会するため「日常生活状況報告」が使用されています。これにより、適正な後遺障害等級認定に必要な情報が細やかに収集される仕組みとなっています。

 

(4)自賠責等級

自賠責保険では、脳外傷による高次脳機能障害であると認定されれば、その症状に応じ、自動車損害賠償保障法(自賠法)施行令別表第一(1級1号、2級1号)および別表第二(3級3号、5級2号、7級4号、9級10号)に定める後遺障害等級のいずれかに該当するものとして扱われます。

後遺障害等級が何等級に認定されるかにより、賠償額に大きな違いが出てきます。

例えば、後遺症逸失利益を算定する場合に用いる労働能力喪失率について申し上げますと、1級、2級、3級では100%、5級では79%、7級では56%、9級では35%となっています。5級、7級、9級の認定基準は特に曖昧ですが、5級と認定されるか、9級と認定されるかによって、逸失利益に関してのみでも2倍以上の差が生じますので、何等級と認定されるかは重要です。

 

(5)最後に

交通事故事案において、自賠責の後遺障害認定においてどのような等級認定を受けるかが賠償額に大きく影響していきます。そして、後遺障害認定は書面で審理される為、適正な後遺障害が認定される為には、書面による十分な準備が必要となります。

上記報告書では、「脳外傷による高次脳機能障害を評価するうえでは、診療医作成の経過診断書および後遺障害診断書の記載内容が極めて重要である。特に、初診時の被害者の状態(意識障害の有無・程度・持続期間等)、各種検査結果、被害者の現在の症状などについて、診療医から提供される医療情報が不可欠である。」と指摘されています。

脳外傷による高次脳機能障害が疑われる場合の損害賠償実務においては、高次脳機能障害についての知識を十分に有する医療機関により適切妥当な継続的な診断が書面化されることが極めて重要です。加えて、被害者の方の精神症状等を詳細に主張・立証していくことが、正当な補償の実現の為には不可欠となります。

鴻和法律事務所では、交通事故専門部も存在し、高次脳機能障害に関して、医師等の協力を得ながら、そのような主張・立証を適切に行い、正当な補償を実現する為のできる限りのサポートをさせて頂くことが可能です。

高次脳機能障害が疑われる場合には、お気軽に鴻和法律事務所にご相談下さい。

 

平成26年11月21日

文責 弁護士 平位直子

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