著作権法における私的使用のための複製(著作権法第30条)について
2024/03/07著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、一部の例外を除いて、使用する者が複製することができます。
その立法趣旨は、私的領域内で行われる複製は全体的に見ても微々たるもので権利者に与える影響は少なく、またそのような行為は補足が困難である上、仮に侵害を発見しても個々の複製による損害は微小であるため、訴訟コストとの比較で事実上訴訟の対象とはなりにくい等の複合的な理由が考えられるとされています(中山信弘「著作権法」(株式会社有斐閣))
「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」については、家庭内の意味するものは、同一家計で同居している人間関係が念頭に置かれているようですが、「準ずる限られた範囲内」については、メンバー相互の間に強い個人的結合関係があることが必要とされているようです(作花文雄「詳解著作権法」(株式会社ぎょうせい))。
例えば、漫画のキャラクターをプリント転写する方法で(漫画のキャラクターの画像をそのまま複製し)キャラクターケーキを作ることについては、親が子のためにする場合は、私的使用のための複製に該当しますが、行為者が第三者に売却するためにする場合は、私的使用のための複製に該当しません(著作権の侵害になります)。
もっとも、キャラクターケーキを作ったとしても、キャラクターの具体的な表現上の特徴を再現できない場合は、そもそも複製や翻案に当たらず、著作権侵害になるとは限らないとの指摘(友利昴「職場の著作権対応100の法則」(株式会社日本能率協会マネジメントセンター))もあり、著作権の侵害に該当するか否かは、最終的には個別具体的な複製物次第であると考えられます。
また、企業その他の団体において内部的に業務上利用するために著作物を複製する行為は、その目的が個人的な使用にあるとはいえないため、私的使用のための複製には該当しないとした裁判例があります(東京地判昭和52年7月22日判タ369号268頁。損害額としては、舞台装置全体の価格1億2000万円、設計料5%相当額を基準として、600万円を認定)。
なお、著作権侵害事案における弁護士の役割については、以下の記事をご覧ください。
令和6年3月7日
文責 弁護士・弁理士 竹永光太郎