ハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件の弁護

ハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件の弁護

2018/02/14

 

依田吉人「ハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件の終局決定例の傾向について」(「家庭の法と裁判」No.12/2018.1)によれば、ハーグ条約実施法が施行された平成26年4月1日から平成29年3月31日までの3年間に東京及び大阪の各高家裁において合計21事案の終局決定がなされています(このうち約3割が日米間の事案であるといわれています)。

そこで、今回は、ハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件のうちインカミングケース(外国から日本に子供が連れてこられ、又は、留置されたケース)で子を監護している者(以下「TP」といいます)の代理人弁護士の役割について、概略をご説明します。

 

子の返還申立事件の特徴としては、①親権や監護権の帰属そのものは審理・判断の対象ではないということ、②早期審理が要請されており、基本的には、申立てから6週間以内に決定がなされること(申立てから約2週間後に第1回期日、申立てから約4~5週間後に第2回期日、申立てから約6週間後に決定)、③返還拒否事由がない限り、原則として子を返還しなければならないことが挙げられます。

つまり、ハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件におけるTPの代理人弁護士は、より迅速さと的確な主張立証が求められているということができます。

 

日本国への連れ去り又は日本国における留置により子についての監護の権利を侵害された者(以下「LBP」といいます)による子の返還申立て等を受けたTPからのご相談を受けた場合、まずは子の返還事由の有無(常居所地国の所在、監護の権利の侵害の有無、留置の開始時期等)を検討します。

また、例外的に、返還拒否事由があれば子の返還を拒否できるとされていますので、返還拒否事由の有無も検討することになります。例えば、連れ去り若しくは留置開始の前後の同意又は承諾の有無、常居所地国に子を返還することによって子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険の有無等を検討します。その際、日本に帰国したときの航空券、外国から日本への荷物の送付に関する書類、TPとLBPとの間の手紙やメール、子の学校の様子がわかる書類、TPのご両親の陳述書など多種多様な資料を確認・検討します。子の年齢によっては子の意思を確認することもあります。

 

続いて、裁判所に提出する答弁書の作成及び提出を行います。併せて、証拠を準備し、裁判所に提出します。おおよそ申立書を受け取ってから答弁書や証拠の提出までに1週間程度と準備期間が短いため、弁護士と依頼者との間でメール等を利用することにより、証拠書類のやりとり等を迅速に行うことができると大変便利です。ちなみに、外国語で記載された証拠は、翻訳も同時に提出することになります。

裁判所への出頭前にはリハーサルを行い、裁判所及びLBP側からの想定される質問にも充分に備えます。子の住所地が西日本の場合、第一審の裁判管轄は大阪家庭裁判所となりますが、同裁判所への出頭の際に、弁護士も同行します。

 

参考までに、当職がインカミングケースのTPの代理人を担当した事案においては、法28条1項3号(申立人が当該連れ去りの前若しくは当該留置の開始の前にこれに同意し、又は当該連れ去りの後若しくは当該留置の開始の後にこれを承諾したこと)の返還拒否事由があるとされ、LBPからの子の返還申立を却下することができました。

当該事案においては、LBPによる子の返還申立て前にTPからご相談をいただいていたために事前の対応等の助言ができたことに加え、LBPによる子の返還申立て後においても当職とTPとでメール等を利用することにより、多くの証拠書類等のやりとりをタイムリーに行うことができたため、子の返還申立に至るまでの当事者間の交渉経緯等について迅速かつ的確に主張立証をすることができたことが良い結果につながったと思います。

 

平成30年2月14日

文責 弁護士 竹永光太郎

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