性被害事件(強制わいせつ・強制性交等罪)の弁護活動

性被害事件(強制わいせつ・強制性交等罪)の弁護活動



1 強制わいせつ事件、強制性交等罪事件について

⑴ 13歳以上の者に対して暴行したり脅迫したりしてわいせつな行為をすると「強制わいせつ罪」が成立し、「6カ月~10年」の懲役となります。このとき、被害者に怪我を負わせたり死なせたり場合には、致死傷罪として「3年~20年の懲役」又は「無期懲役」となります。
13歳以上の者に対して暴行や脅迫によって性行為を行うと、「強制性交等罪」が成立し、「5年~20年」の懲役となります。このとき、被害者に怪我を負わせたり死なせたり場合には、「6年~20年の懲役」又は「無期懲役」が科されます。致死傷罪については、強制わいせつや強制性交等罪が未遂であっても成立します。
なお、13歳未満の者とわいせつな行為を行ったり、13歳未満の者と性行為を行うと、たとえ同意があっても強制わいせつ罪や強制性交等罪になります。また、薬物などで拒否できない状態にさせた上でわいせつ行為や性行為を行った場合には準強制わいせつ、準強制性交等罪として強制わいせつ罪や強制性交等罪と同じ刑が科されます。
また、平成29年の刑法改正で「監護者性交等罪」という罪が新たに新設されました。「18歳未満の児童を監護している者」が同意があるかどうかにかかわらず、18歳未満の児童に対して性交を行った場合には、強制性交等罪と同じ刑が科されます。この「監護している者」には親だけではなく、親と同程度に保護監督している者を基準とし、例えば義理の親や養護施設などの職員といった方も該当することがあります。

⑵ 強制わいせつや強制性交等罪事件にはいくつかの特徴があります。
1つ目の特徴は、被害者が許してくれるかどうかが極めて重要になるという点です。
平成29年の刑法改正により、強制性交等罪と強制わいせつ罪は「親告罪」ではなくなり、被害者からの告訴がなくても起訴することができるようになりました。
しかしながら、それでも被害者が許してくれているかどうかが、起訴するかどうかにあたって重視されていることには変わりありません。その意味で、被害者が被害届や告訴を取り下げてくれるかどうかが極めて重要になります。
2つ目の特徴は、性犯罪の被害者は非常に大きな精神的被害を被っている方が多く、被害者の方を更に傷つけることのないようにしなければならないという点です。被害者とどのように接していくかということが重要な課題となってきます。
3つ目の特徴は、強制わいせつや強制性交等罪の否認事件では、「合意があった」「合意があったと思っていた」という主張が行われることがあり、合意の有無や合意の有無の認識が問題となることが多いという点です。そのため、弁護方針も含めて慎重に検討する必要があります。

2 強制わいせつ事件、強制性交等罪事件の弁護

強制わいせつ事件、強制性交等罪事件での弁護活動では、上記のような3つの特徴を踏まえた弁護活動が欠かせません。

⑴ 被害者との示談交渉にあたっては、被害者がそもそも謝罪のために会ってくれないという場合があるため、警察官や検察官にも協力を求めながら謝罪と被害弁償をさせてもらえないかということを根気強く行っていきます。
特に顔見知りでない人が被害者の事件の場合には、今後一切出会うことがないようにする配慮や、住所などの個人情報が被疑者に知られないよう配慮することなどを説明し、少しでも被害者の不安を取り除くようにしていきます。
その上で、被害者に許してもらうために謝罪と被害弁償(慰謝料)の準備を行っていきますが、強制わいせつ事件や強制性交等罪事件においてはその金額が軽微な痴漢事件と比べて高額になる傾向があります。
また、被害弁償金の準備にあたって、被疑者が結婚している場合には離婚問題に発展する場合も多いため、妻に協力してもらうことが難しい場合があります。そういった場合には両親や親戚に協力をお願いします。
起訴された後に示談が成立した場合であっても、刑が軽くなる大きな要素となります。

⑵ ナンパや顔見知りの場合などに多く見られますが、強制わいせつや強制性交等罪にあたって「合意があった」「合意があったと思っていた」との主張が行われる場合があります。
そのような場合には、具体的に現場がどのような状況だったのか、場所、時間帯、被害者との関係、メールがある場合にはその内容などが客観的な証拠として重要になってきます。
客観的な証拠をもとにして最も重要な証拠である被害者の女性の証言に虚偽部分がないかということを慎重に調査していくことになります。
その結果、被害者の証言の信用性がないとして無罪となる場合もあります。当事務所においても、不起訴や無罪となったケースがあります。
もっとも、このような主張自体が反省していないことのあらわれとみられて量刑の重くなる要素となる場合もあるため、その方針にあたっては被疑者と慎重に検討していかなければなりません。

以上

 

平成30年4月27日 改訂
文責 弁護士 矢口耕太郎

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