遺言・相続

遺言・相続

取扱分野

  • ・遺言書作成、遺言執行
  • ・遺産分割に伴う諸問題(協議、調停、審判、訴訟)
  • ・相続放棄、限定承認
  • ・相続に伴うその他の諸問題

弁護士にとっても難しい相続問題

相続問題は弁護士の日常業務です。人が亡くなると必ず相続の問題が生じますが、相続人の間で争いがある場合、その交渉や裁判の代理人になることができるのは弁護士だけですから、ほとんどの弁護士は相続問題を取り扱ったことがあります。しかし、だからといって、相続問題は弁護士であれば誰に任せても同じだ、というわけではありません。相続問題は、実はかなり奥が深いのです。

経験+調査の重要性

相続や遺産分割では、あらゆる財産が対象になります。賃料収入もリスクも抱える賃貸物件や産業廃棄物が埋まった土地、過去には存在しなかった新しい金融商品など、評価が難しい財産もあります。また分け方にしても、生命保険金を考慮するかどうかなど法律の規定だけでは判断できない問題が多く、しかも重要な裁判例がどんどん生まれている分野です。そのため、相続問題に適切に対応するには、一定の経験はもとより、最新の裁判例や学説の調査などが必要になるのです。私たちも、事務所一同、相談者や依頼者のため、相続問題の専門家であり続けるため、日々努力をしています。

遺産分割の手段

遺産分割協議
遺産分割協議書等を作成(実印・印鑑証明書)
遺産分割調停
調停調書を裁判所が作成
遺産分割審判
裁判所が審判(決定)

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遺産分割の具体的な手法

1 相続人及び法定相続分の確定(相続人は誰か)
被相続人(亡くなった人)の戸籍について,生まれたときまでの除籍謄本等を遡り,相続人になるものを特定していきます。
2 遺産となるものの確定(遺産はどの財産か)
遺産となるものを一覧表にまとめていきます。
不明な預貯金等については金融機関等に照会をかけます。所得税の確定申告書なども役に立つ場合があります。
不動産については,権利証がなくて存在が分からないときは名寄せを市役所でとって調べます。
3 遺産の評価の確定
遺産について,金銭的な評価を確定していきます。
4 特別受益の有無及びその評価の確定
特別受益(いわゆる生前贈与等)があるかどうか,持ち戻し免除の意思表示が認められるかどうか,別受益を金銭的にどのように評価できるか,を確定していきます。
5 寄与分の有無及びその評価の確定
寄与分があるかどうか,あるとすればそれを金銭的にどのように評価できるか,を確定していきます。
6 遺産総額の算定
上記を踏まえたうえで、遺産総額を算定します。

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鴻和法律事務所では、相続・遺産分割でお悩みの方を対象として、御希望の方には鴻和相続専門部に所属する2名の弁護士による専門法律相談を行います。法律相談の費用は1時間で1万0800円となります。
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遺言書作成の弁護士費用の具体例

父が、妻と子ども2人(長男、長女)に対し、自宅用住居として所有している不動産(土地及び建物:時価4000万円)及び預貯金のうち普通預金(預金額850万円)については妻に相続させることとし、所有している上場会社株式(時価1300万円)については長男、預貯金のうち定期預金1000万円については長女に相続させることを希望した場合において、遺言書を作成し、さらに公正証書にした場合

 → 遺言書作成費用(定型)15万円+公正証書加算3万円=18万円
※弁護士費用とは別途、公証人に対して支払う手数料が必要です。

遺産分割事件の弁護士費用の具体例

以下の具体例は、事案簡明な事件の一例であり、個別具体的な遺産分割事件の弁護士費用については、相続財産の額、事件の難易度、手数の繁閑等に応じて、担当弁護士と依頼者との間の合意により決定いたします(以下に記載する金額は消費税込です。また、別途交通費などの実費が発生します)。

費用算定の前提とする事案
・亡くなられた方(被相続人):Aさん
・相続人:妻Bさん、長男Cさん、二男Dさん(依頼者)
・相続財産:2000万円
(1) 遺産分割交渉事件 上記の事案で、Cさんへの200万円の生前贈与の有無が争いになり、その生前贈与があることを前提とした協議が成立し、Dさんが550万円の遺産を取得した場合
→着手金216,000円、報酬金378,000円
(2) 遺産分割調停事件 (1)の弁護士による交渉を経ても協議が整わなかったため、遺産分割調停を申し立て、生前贈与があることを前提とした調停が成立し、Dさんが550万円の遺産を取得した場合
→着手金216,000円(遺産分割交渉について)、追加着手金(遺産分割調停について)108,000円、報酬金378,000円

遺言・相続のQ&A

誰が相続人になるのかについて
Q1 相続人は誰になるのでしょうか?
(1)まず,子どもは必ず相続人になります。(民法887条1項)
(2)次に,結婚している配偶者も必ず相続人になります(民法890条)。
(3)子どもが先に亡くなられていた場合でも,その子の孫がいる場合には,孫も相続人になります(民法887条2項) (4)どもや孫が誰もいない場合には,亡くなられた方の親が相続人になります(民法889条1項1号)。
子どもや孫がおらずかつ親や祖父母等(直系尊属)も亡くなられている場合には,兄弟姉妹が相続人となります(民法889条1項2号)。
Q2 相続人が誰になるか、どうやって調べればよいのでしょうか?
本籍地のある市町村の区役所に行って,亡くなられた方の生まれたときから死ぬまでの全ての戸籍謄本や除籍謄本,改製原戸籍謄本,さらには各相続人の戸籍謄本を取り寄せる必要があります。
戸籍謄本等はそれぞれの方の本籍地の市役所等でしか発行されません。相続人が先に亡くなっている場合には,その先に他にも相続人(孫や祖父母)がいないかについても戸籍をたどる必要があります。戦災等で戸籍謄本が焼失しているケースの場合には,戸籍の発給ができない旨の証明書を取り寄せる必要があります。
Q3 私は主人と30年間同居していますが,まだ婚姻届を出していません。もし主人が亡くなった場合,私は相続人になれますか?
婚姻届を出していない事実婚の状態(内縁の妻といいます)では,法律上相続人になることができません。相続人が他にいない場合の特別縁故者への財産分与(民法958条の3),居住用の借地権の承継(借地借家法36条)といった内縁の妻にも財産や権利を取得させる制度もありますが,例外的な取扱いとなります。内縁の妻の場合で遺産を譲り受けたい場合には原則として遺言を作成しておいてもらうことが必要となります。
Q4 私は養子に行ったのですが,養親が亡くなりました。養子は相続人になりますか?また,養親には実の子どももいるのですが,相続分は異なるのでしょうか?
養子は相続人になります(民法809条,887条1項)。また,実の子との間でも相続分は平等です。
Q5 私は養子に行ったのですが,実の親が亡くなりました。養子にいっていても相続人になりますか?
通常の養子であれば,実の親についても相続人になります。ただし,特別養子縁組(父母による監護が著しく困難な場合などに厳格な要件を経て認められる手続きです(民法817条の2~7)。原則として6歳未満の子供に限り認められ,審判を経る必要があります。戸籍にも養子縁組した旨は記載されず,特別養子縁組の存在は分かりにくくなっています。)が成立している場合には,実の親との親族関係が終了したものと扱われますので,相続人にはなりません(民法817条の9)。
Q6 私は結婚していない男性との間に一人子供がいます。父親として,認知はしてもらっています。父親が亡くなった場合私の子供は相続人になるのでしょうか?
認知をしてもらっていれば,非嫡出子として相続人となります。但し,相続分は嫡出子(結婚している夫婦の間に生まれた子)の2分の1となります(民法900条4号)。お互い子どもがいる者同士で再婚したのですが,私の連れてきた子供は再婚相手の相続人になりますか。再婚相手の方と養子縁組をしている場合には相続人になりますが,そうでない限りは民法上の親子関係は存在せず,相続人にはなりません(民法809条,887条)。
何を相続するのかについて
Q1 夫が亡くなりました。夫は遺産もあるのですが借金も残っています。子どもに全財産を受け継がせるとともに,借金についても債権者に対して全部支払ってもらいたいと考えているのですが,そのような内容の遺産分割協議書を作成すれば問題ないのでしょうか。?
金銭債務(借金)については,少なくとも遺言等がなければ当然に法定相続割合に応じて分割されることになりますが(最判S34.6.19),しばしば遺産分割の対象として遺産分割の協議や調停において負担者を決めることがあります。
相続税を計算する場合にも,この合意内容を下に各人の相続税が計算されますので,このような遺産分割協議や調停を行うことは意味がないわけではありません。
しかし,債権者は遺産分割協議や調停の内容に拘束されず,それぞれの相続人に対して法定相続割合に応じて請求することができます。したがって,たとえ遺産分割協議で一人の相続人がすべて負債を支払うと決めた場合でも,債権者から支払いを請求された場合には,法定相続割合に応じて支払う必要があります。もちろん,債権者に立て替えて支払った分については,後で子どもに負担を求めることはできますが,仮にその時点で子どもが財産を失っていれば,非常に困った状態になってしまいます。このような事態を避けるためには,遺産分割協議書を作成するよりも,子ども以外の相続人全員が相続放棄の手続をとった方がいいでしょう。相続放棄をすれば,債権者に対しても,負債を支払う義務を免れます。
Q2 夫が亡くなりました。夫は生命保険を契約しており,死亡保険金については私が受取人となっていました。死亡保険金は,遺産として遺産分割の対象になるのでしょうか?
相続人のうち特定の者が受取人として指定されている場合,死亡保険金は遺産に含まれず,原則として遺産分割の対象とはなりません。例外として,「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らして,到底是認することのできないほど著しいときと評価すべき特段の事情があるとき」は,民法903条を類推適用し,特別受益に準じて遺産持戻しの対象になるとされています(最判H16.10.29)。この「特段の事情」については,主に保険金の額や遺産総額に対する保険金の比率等を考慮して判断します。
Q3 夫が死亡して1年が経過しているのですが,相続人間でトラブルが生じまだ遺産分割が終わっていません。夫は生前自分の土地を駐車場として賃貸しており,ここから毎月賃料が入ってきています。遺産分割が終わるまでに発生している賃料は,遺産分割の対象になるのでしょうか?
遺産分割が終わるまでの賃料については,遺産とは別に,相続人がそれぞれ分割した単独債権として当然に取得するものとされています(最判H17.9.8 )。したがって,誰が不動産を遺産分割で取得するのかとは関係なく,遺産分割が終わるまでに発生した賃料については,それぞれの相続人の法定相続分で分けることになります。ただし,合意が成立しさえすれば,遺産分割前に発生した賃料についても遺産分割に組み入れ,例えば将来不動産を取得する人に全部渡すことも可能です。
預金,貯金の払い戻しについて
Q1 夫が死亡して3カ月が過ぎていますが,他の相続人との間でトラブルが生じており,遺産分割が終わっていません。自分の相続分だけでも銀行や郵便局から預金を下ろそうとしたのですが,払戻請求書に相続人全員分の署名と実印と印鑑証明書が必要だと言われました。どうにかして自分の相続分だけ払戻しを請求することはできないでしょうか?
預貯金のような金銭債権は,分けることのできる債権(可分債権)とされており,本来的には遺産分割をしなくても当然に自分の分だけ請求できるものとされています。したがって,本来であれば相続人の一人から法定相続分にしたがって金融機関に請求すれば,支払わなければならないということになります。しかしながら,金融機関の立場としては,その後の紛争に巻き込まれたくないという不安から,相続人一人分だけの請求には払戻に応じないという運用が実務上行われています。そこで,相続人の一人が払戻しを請求する場合には,訴訟手続をとって払戻しを請求することが多いです。なお,預金債権を遺産分割協議の対象に含める合意が成立する余地がある間は,金融機関は分割の払戻を拒むことができるとする判決があります(東京地判H9.10.20)また,定額郵便貯金については不可分債権とされ,自分の相続分だけの払戻し請求はできないという裁判例があります(東京地判H15.1.20)。
法定相続分について
Q1 相続人が数人いますが,遺言がありません。相続分の割合はどのように法律で定められているのでしょうか?
①子どもと配偶者が相続人である場合は,子どもと配偶者の相続分はそれぞれ2分の1ずつとなります(民法900条1号)。子どもが数人いる場合には,相続分を均等にするのが原則ですが,子どもの中に嫡出子と非嫡出子がいる場合は,非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1となります(民法900条4号)
②配偶者と直系尊属(親など)が相続人となるときは,配偶者の相続分は3分の2,直系尊属の相続分は3分の1となります(民法900条2号)
③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合は,配偶者の相続分は4分の3,兄弟姉妹の相続分は4分の1となります。兄弟姉妹が数人いる場合は,兄弟姉妹間の相続分は原則として均等ですが,その中に父母の一方だけが同じくする兄弟姉妹がいる場合は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の1となります(民法900条3,4号)。
④代襲相続人がいる場合は,代襲相続人の相続分は被代襲者が受けるべきであった相続分と同じになります(民法901条)。
特別受益について
Q1 特別受益とはどういう制度ですか?
特別受益の制度は,生前に亡くなった人から相続人に対して贈与があった場合や遺贈が行われた場合など,遺産の前渡しをしたとみるべきものがある場合に,遺贈などを「特別受益」と呼び,遺産の中に持ち戻すことによって共同相続人の間の公平を図る制度です。特別受益の内容については,民法903条1項が「共同相続人中に被相続人から遺贈を受け,又は,婚姻,養子縁組,生計の資本として贈与を受けた者があるときは,被相続人が相続開始時に有した財産の価額に,贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし,前3条により算定した相続分の中からその遺贈,贈与の価額を控除した残額を,その者の相続分とする。」と規定しています。
Q2 特別受益者の具体的な相続分はどのように計算したらよいのでしょうか?
(相続開始時の財産+生前贈与分)×法定相続分-特別受益分(遺贈,贈与)=特別受益者の具体的相続分
 となります。
寄与分について
Q1 寄与分とはどのような制度ですか?
寄与分とは、共同相続人中に被相続人の事業に関する労務の提供その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者が存在するときに、被相続人が相続開始時に有した財産の価額からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、法定ないし遺言による相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とする制度(民法第904条の2)のことで、被相続人の財産の維持又は増加に貢献した相続人の相続分を増加させて共同相続人間の公平を図る趣旨から設けられた制度です。
Q2 寄与分の金額はどのように決まるのですか?
寄与分の金額は共同相続人間の協議で決められるのが原則です(民法第904条の2第1項)。但し、この協議が不調に終わった場合、協議が不可能な場合には、寄与者の請求により、家庭裁判所は寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して寄与分を定めることになります(民法第904条の2第2項)。
Q3 寄与分が認められるのはどのような場合なのでしょうか?
民法は「特別の寄与」があるときに限って、寄与分を認めると定めています。そこで共同相続人間の協議ではなく、家庭裁判所が寄与分を定める場合には、被相続人との身分関係や生活関係に応じて通常期待される程度を超える貢献、すなわち夫婦間の同居、協力、扶助の義務、親族間の扶養義務の範囲を超える貢献が認められて初めて寄与分が認められます。例えば、妻の場合であれば、家事労働のほかに小売業、農業等の家業に従事して、妻としての通常の働きの他に特別の働きをして、夫の財産の維持・増加に特別の貢献をしたと認められる場合には、寄与分が認められ得ることになります。
Q4 死亡前に父の介護をしていたのですが、寄与分は認められますか?
親族間の扶養義務の範囲内でなされた行為は寄与行為とは認められないのが原則です。但し、扶養義務の範囲を超えた貢献が認められる場合には寄与分が認められ、被相続人(母)の四女が入院前の10年間にわたり、痴呆症状の現れた母を寝ずの番で絶えず付き添って療養看護を行い、死亡の直前の5ヶ月間は入院した母の病院にタクシーで通い被相続人に付き添い、身の回りの世話をした場合に寄与分を認めた裁判例(盛岡家審昭61.4.11)があります。
相続放棄について
Q1 父が亡くなったことを知ってもうすぐ3カ月が経過しそうですが,父が事業を行っていたこともあって,遺産があまりに多く調査が終わっておらず,相続を承認するか放棄するかまだ迷っています。3カ月の期間は延長できないのでしょうか?
家庭裁判所に対して延長を請求することができます(民法915条1項但書)。期間伸長の申立がされますと,裁判所は,相続財産の範囲や複雑性,相続人の居住状況などの事情を考慮して,その当否を判断することになります。遺産の種類があまりに多く,調査が終わらないような場合は,裁判所の裁量により,期間延長が認められる可能性があります。
Q2 父が亡くなりました。父は生前膨大な借金を抱えていたため,相続放棄をしようと考えています。相続放棄の手続はいつまでにしなければならないのでしょうか?
「自分のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」に家庭裁判所に対して相続放棄の申出をしなければなりません(民法915条,938条)。3カ月の起算点について,判例は「熟慮期間は,原則として相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきものであるが,相続人が右各事実を知った場合であっても,右各事実を知った時から3カ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが,被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ被相続人の生活歴,被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって,相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには,熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解する」と示しています(最判昭59.4.27)。
単に被相続人が死亡してから3カ月経過すると相続放棄ができなくなるわけではないという点に注意が必要です。
Q3 母が亡くなりました。そこで、母名義での貯金がありましたので、貯金を数十万円解約して解約金を葬儀費用の一部に充てました。 母に借金は全くないと思っていたのですが、葬儀から2週間後、突然銀行から「母が連帯保証人になっていてその債務が5000万円ある」との通知が来ました。とても5000万円など払えるはずがなく、相続放棄することを考えています。
ところが、相続財産を使ってしまうと相続放棄できなくなるといわれました。私は相続放棄できなくなるのでしょうか?
相続人が、相続財産の全部又は一部を「処分したときには、相続を単純承認したものとみなされて、相続放棄ができなくなります。ただし、「処分」に該当しない場合には、単純承認とはみなされません。
今回のケースでは、葬式費用については相続債務ではないため、形式的に見れば相続財産の処分にあたるとも考えられます。しかしながら、大阪高等裁判所が平成14年7月3日に出した決定では、葬儀費用は社会的儀式としての必要性が高く、また必ず相当額の支出を伴うものであるため、相続財産から葬儀費用を支出する行為は社会的見地から見て不当なものとはいえず、相続財産の「処分」にはあたらないと判断しました。
もっとも、墓石や仏壇の購入などで、不相当に高額な支出をしたような場合には相続財産の処分に該当する場合もあります。社会的見地からみて不当か否かという部分で判断されることになると思われます。
本件では、お母様名義の貯金を数十万円解約してこれを葬儀費用の一部に充てたということですから、相続放棄が認められる可能性は十分にあります。ただし、あくまで高裁判例で認められるケースがあるというだけですので、葬儀費用などのために遺産預金を払い戻すことは、できれば避けた方がよいと思われます。
遺言書の書き方について
Q1 遺言を自分で書こうと思うのですが,どのように書けばよいのでしょうか。また,一度書いた遺言書を修正しようとした場合,何か注意することはありますか?
遺言は,自分で書くことができ,自分で書いた遺言を「自筆証書遺言」といいます。遺言には,偽造や変造を防ぐために厳格な方式が定められており,民法の定めた方式にしたがってなければ,法律上,原則として遺言としての効力が生じません(民法960条)。自筆証書遺言は,遺言者が,自分で,遺言の内容の全文と,日付と氏名を書いて,署名の下に印鑑を押さなければなりません(民法968条1項)修正する際に注意しなければならないのは,修正する場合にも方式があるということです。修正する場合には,変更した場所に印鑑を押した上で,その場所を指示して変更したことを記し,さらにその場所に氏名を書かなければいけません。例えば,100万円を200万円にする場合は,1のところに印鑑を押し,上部の空欄に「このところ一字訂正」等記載したうえで署名までしなければなりません。普通の文書では訂正に署名まで要求されませんが,遺言書には変更には署名が必要ですので,注意が必要です。別途新たに遺言書を書きなおした場合は,後の日付の遺言書が有効となります。
Q2 自分で遺言書を作ろうと思ったのですが,指が震えて書けないため娘に口で伝えてパソコンで作成しました。氏名は自分で書いて印鑑も押しています。パソコンで作った遺言書は有効になるのでしょうか?
自筆証書遺言は,偽造や変造を防ぐために自分で書くことが要求されています(民法968条1項)。パソコンで作った字は個性が出ないため偽造の危険性が非常に大きく,パソコンで作成した遺言書は無効とされています。なお、公証人が関与する秘密証書遺言であれば、パソコンでの作成も可能です。
Q3 父は字が書けないため,録音テープをとって遺言をしてもらったのですが,録音テープによる遺言は有効となるのでしょうか?
遺言書は,偽造や変造を防ぐために自分で書くことが要求されています(民法968条1項)。録音テープによる遺言は,テープの声が本人かどうかの判別が困難な場合がありますし,今の技術では編集により偽造や変造も簡単に行うことができます。したがって,録音テープによる遺言は遺言書として無効です。
Q4 自筆証書遺言の日付を書く際の注意点はありますか?例えば,遺言書の日付に「平成22年1月吉日」と書かれてある遺言書は有効でしょうか?
自筆証書遺言の日付は厳格に判断されます。後の遺言は前の遺言に優先するとされていることから,2通以上の遺言書がある場合に時間の前後を確定して遺言書の真意を確保する必要があるからです。したがって,年月日が自書されていない遺言書は無効ですし,年月だけで日の記載がない遺言書も無効です。「平成22年1月吉日」と書かれてある遺言書も,吉日は一月に何度もありますので,日付が不明確なものとして無効になります(最判S54.5.31)。もっとも,例えば「75歳の誕生日」や「喜寿祝賀の日」というようにその記載によって日にちを正確に知ることができる場合には,日付が確定しているものとして有効な遺言書になります。
Q5 父の遺言書には,署名の欄に下の名前だけが書かれており,名字が書かれていませんでした。名字が書かれておらず,名前だけの遺言書は有効となるでしょうか?
氏名の自書は自筆遺言証書の要件とされていますが,氏名の自書は筆者の同一性を確かめて遺言書が書いたものであることを明らかにしようとする趣旨に基づいています。そのため,氏名の要件は日付よりも緩く,他の人から区別できるものであれば足りることになります。名前だけが書いてある遺言書の場合,厳密には名字が書いていないと氏名の自書という要件は満たさないことになりますが,筆者の同一性は名前だけで確かめられる場合が少なくありません。古い裁判例では名前だけでの遺言書を有効としたものもあります。したがって,名前だけでも,父が書いたことが明らかなような場合は,有効と考えることになるでしょう。
相続はいつ開始するのかについて
Q1 私の長男は,成人した後も無職で家に引きこもっています。最近その長男が,私が生きているにもかかわらず,自分には相続の権利があるから,今相続分のお金を分けてくれと言ってきました。長男にそんな権利はあるのでしょうか?
生前は被相続人の財産が変動する可能性があることから,相続の権利は発生しないものとされています。「推定相続人は,単に将来相続開始の際,被相続人の権利義務を包括的承継すべき期待権を有するだけであって,現在においては,まだ当然には,被相続人の個々の財産に対し権利を有するものではない」(最判S30.12.26)と判例も述べており,この判例が示す期待権は,単なる事実上の期待があるにとどまるものと理解されています。したがって,生きている間に長男にお金をもらうことのできる権利は発生しません。
相続人の欠格事由について
Q1 私の姉が父の遺言書を自分に有利なように偽造していたことが発覚しました。姉に相続させることは感情的に許すことができません。相続させないようにすることはできないのでしょうか?
法律上,原則として
①故意に被相続人や相続人を死亡させようとしたために刑に処せられた場合
②被相続人が殺害されたことを知って告発又は告訴しなかった場合
③詐欺又は脅迫によって相続に関する遺言を妨害したり,変更させた場合
④遺言書を偽造や変造,破棄又は隠匿した場合は,相続人となることができないとされています(民法891条)判例によれば,遺言の偽造や変造,破棄隠匿は相続に関する不当な利益を目的とすることが必要と解釈されていますが(最判平9.1.28参照),今回のケースでは姉は自分に有利なように遺言書を偽造していたというのですから,不当な利益を目的としていることは明らかであり,欠格事由に該当します。欠格事由に該当すると,被相続人との関係では裁判所の宣告を必要とせずに法律上当然に相続資格を失うことになります。但し,相続登記を行う場合には,相続欠格者が相続欠格者であることを認める書面(印鑑証明書付き)若しくは確定判決の謄本が必要となりますので,姉が相続欠格者であることを認めるのであれば,相続欠格者であることを認める旨の書面を作成(印鑑証明書付)を求め,相続登記などの遺産分割手続を進めることになります。姉が相続欠格者に該当することを争っている場合は,裁判所に対して,姉が被相続人の相続について相続権を有しないことを確認する訴えを提起することになります。
Q2 姉が相続欠格者となった場合,姉には子どもがいますが,姉の子どもも相続しないことになるのでしょうか?
相続欠格によって相続する資格を剥奪されるのは当該相続人だけです。相続欠格は代襲相続原因とされていることから,姉の子どもは代襲相続人として相続することになります(民法887条)。
推定相続人に財産を承継させない方法について
Q1 私が死んだ場合,妻と私の兄が相続人になるかと思いますが,兄との仲が悪く,兄には絶対に相続させたくありません。どのような手続をとればよいでしょうか。廃除の手続をとることはできますか?
兄弟姉妹は遺留分がありませんので,兄弟姉妹に遺産を相続させたくないのであれば,配偶者に全財産を相続させるとして,兄弟姉妹の相続分をゼロとする遺言書を作成するか,若しくは他の者に財産を遺贈すればよいです。推定相続人廃除の手続を行うためには,遺留分を有する推定相続人であることが必要であるため(民法892条),兄弟姉妹に対して推定相続人廃除の手続をとることはできません。
Q2 推定相続人廃除の要件である「被相続人に対して虐待をし,若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき,又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」というのはどのように判断されるのでしょうか?
一般的には,被相続人の恣意的なものであってはならず,具体的内容が客観的にみて遺留分の否定を正当とする程度に重大なものであることが必要と解釈されています。裁判例の中には,父の金員を無断で費消し,注意されると暴力をふるい,また勤務先の使い込み金の弁償や罰金の支払い等も父に負担させ,さらに多額の借金をしながら父の家を出て所在不明となっている事案において,何の連絡もない長男の行為は父に対する虐待,重大な侮辱又は著しい非行として廃除を認めた裁判例(岡山家審平2.8.10),父と同居する長男の嫁が義母の看病をしないことから父と不和になり,喧嘩で傷害を負った事案について,直接の原因は父の嫁に対する非難や謝罪要求にあり,父が「不孝者」と落書きしたり,父の側にもかなりの責任があるとして廃除請求が否定された裁判例(名古屋高金沢支決平2.5.16)などがあります。
Q3 私の長男は,成人した後も無職で家に引きこもっていますが,最近になって私に対して暴力まで振るうようになってきました。もう我慢の限界です。将来,私が死んでも絶対に長男には財産を渡したくありません。どのような方法が考えられるでしょうか?
他の者に対して財産を取得させるという遺言をしておく方法が考えられます。簡単な手続で済むことから,実務でもよく使われています。ただし,子どもには遺留分がありますので,遺留分減殺請求権を行使された場合には,遺留分を害された限度で財産が承継されることになります。次に,推定相続人の廃除の手続が考えられます。「被相続人に対して虐待をし,若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき,又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」(民法892条)には推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求できるとされています。さらに,推定相続人の廃除を遺言で行う方法も考えられます(民法893条)。但し,遺言執行者は,遺言が効力を生じた後は遅滞なく推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければなりません。

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